最新記事

自動車

プジョー傘下にもつPSAとフィアットが合弁 世界4位の自動車メーカー誕生へ

2019年12月19日(木)07時26分

自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と、「プジョー」を傘下に持つ仏PSAは、拘束力のある合併契約を締結したと発表した。写真はサン=ナゼールで11月撮影(2019年 ロイター/Stephane Mahe)

自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と、「プジョー」を傘下に持つ仏PSAは18日、拘束力のある合併契約を締結したと発表した。500億ドル規模の対等合併で世界4位の自動車メーカーが誕生する。

両社は6週間前に経営統合計画を発表していた。合併は今後12─15カ月で完了する見込み。統合後の新会社の名称はまだ決まっておらず、数カ月内に決めるとしている。

両社は、年37億ユーロ(41億ドル)のコスト削減目標を工場を閉鎖せず達成する計画作りに着手する。フランス、イタリアともに労組が雇用喪失を懸念しているだけに、計画作りは困難が予想される。

北ドイツ州立銀行の自動車アナリスト、フランク・シュウォペ氏は「両社トップの発言は違っても、新会社は大規模な節減が必要で、工場閉鎖を迫られるだろう」と指摘。PSAとFCAはともに技術とプロダクトレンジの双方で同業他社に大きく遅れをとっているため、新会社は大規模な投資が必要になるとの考えを示した。

DWFのジョナサン・ブラントン氏は「PSAとFCAの合併案件は、特に欧州連合(EU)内で数多くの当局から承認を得る必要がある」と述べた。

ルメール仏経済・財務相は、欧州2位と3位の自動車メーカーの統合を歓迎しながらも、PSAの大株主としてフランス政府は新会社の本拠地がどこになるかなど、注意深く見守る方針だと述べた。

調査会社LMCオートモーティブによると、昨年の販売台数は2社あわせて870万台だったが、潜在的には1400万台の生産能力を有するという。

合併は、需要減少と、厳格化した規制に対応する環境対応車の製造コストに対応するのが狙い。

設備過剰にどう対応するかや、プラットフォームの絞り込みはこれから。

新会社のトップとなる、PSAのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は「現段階では何も決まっていない。どのような機会があるか評価作業をしてきた」と説明した。

合併完了に先立ち、PSA株12.2%を保有する中国の東風汽車集団<0489.HK>は、同株式3070万株をPSAに売却。売却するPSA株の価値は直近の終値で6億7900万ユーロ(7億4840万ドル)。東風汽車は、統合後の新グループの株式4.5%を取得する。タバレス氏は「この件に関しては双方のチームが詳細に精査してきた。競争上の観点から何も問題はないと考えている」と述べた。

新会社の取締役会は11人で構成。PSA、FCAが5人ずつ指名する。この10人には両社の労働者代表も含まれる。

残り1人の取締役はPSAのタバレスCEO。タバレス氏は最初の5年間、新会社のCEOを務める。

[パリ/ミラノ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、パキスタンによる国境全域での攻撃発表 パキ

ビジネス

日経平均は続伸、米英貿易合意や円安を好感 TOPI

ビジネス

日本製鉄、今期純利益は42%減の見通し 市場予想比

ビジネス

リクルートHD、今期10%増益予想 米国など求人需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中