最新記事

アメリカ社会

密かに人気集めるサバイバルキャンプ トランプが分断した米国で深まる社会不安

2019年12月30日(月)17時00分

サバイバルキャンプから眺める山。9日撮影(2019年 ロイター/Adria Malcolm)

レイヨウや牛が点々と広がるコロラド州コロラド渓谷の景色にAR-15ライフル銃を向けながら、ドルー・ミラー氏は自分の新しいサバイバルキャンプ「フォーティテュード牧場」の会員がどのようにして終末の時代を生き抜くかを説明する。

米空軍の元情報将校のミラー氏によると、山岳部の森林の下に建設中の牧場は、生物工学的なパンデミック(世界的な大感染)から送配電網への攻撃に至るあらゆる出来事から逃げようとする米国人のシェルターになる。

年間1000ドル前後の会費を支払えば好きなときにキャンプで休暇を過ごせるし、社会崩壊に際しては避難所として利用することができる。

「武器をたくさん持ち、たくさんの監視所や防御壁の場所にメンバーを配置しさえすれば、あえて戦闘をする必要があるとは思わない」

ミラー氏がチェーン経営するサバイバルキャンプの広がりから、歴史的に反政府主義のサバイバリスト(生存主義者)と関係してきた「プレッパー(大災害や戦争の終末的危機への備えに取り組む人々)」の運動が米国民の主流をも次第に引き付けつつあることが浮き彫りになる。近年はこうした運動が、再生可能エネルギーや自給自足、持ち物を必要最小限に減らすミニマリスト主義の暮らし、気候変動への懸念などへのミレニアル世代の関心と重なるようになった。

そして、そこに政治が登場する。

ミラー氏によると、来年11月3日の大統領選の頃に米国で政治的分断が急激に深化するとの懸念が顧客の間で強まっている。ミラー氏は「大統領選後に大規模で長期的な社会不安が生じかねないとの懸念が広がっている。『この新大統領は気にくわない。認めない』と皆が言い出すような状況だ」と話す。最悪の場合は「内戦」が起きるシナリオも想定しているという。

フォーティテュード牧場はありそうもない出来事、もし現実になれば助かる見込みがないことに備えていると疑いを挟む声もある。

ニューヨーク大学の疫学専門のロビン・ガーション教授は、天災や大停電に対する備えには合理的なレベルのものがある一方で、極端過ぎる備えをしようとする運動も存在すると指摘。地球規模のパンデミックや核戦争を乗り切るのに、ある敷地内で見ず知らずの人々と団結して暮らすというのは、誰にとっても最悪の結末になると予想する。

「現代の暮らしに慣れた人々にとっては、生活の質が維持できなくなり、生存価値がないような水準まで生活が劣化するだろう」と語った。

大口径ライフル

太陽光発電設備付きのフォーティテュード牧場は、都市部や郊外のぜい弱さが心配なミドルクラスの米国人に応える。伝統的な生存主義者たちと異なり、多くは自給自足の訓練を受けておらず、狩りの仕方が分からない者もいる。牧場は年間会費のほか、護身用のAR-15ライフル1丁か連射式ショットガン1丁の所持を主要な要件とする。

牧場は3カ月分の食糧を備蓄するほか、ヤギやニワトリを飼う。社会崩壊の危機に見舞われたときには、メンバーはミラー氏のような幹部の命令に従う。任務には薪や木の実を集めたり、獲物を仕留めたり、野菜作りも含まれることになる。

ミラー氏は、法と秩序が崩壊すれば都市部から略奪者がなだれ込んでくるとみており、牧場に強力な火器を備えるつもりだ。この新しいコロラドのキャンプには既に、装甲車に搭載できる大口径ライフルがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

キーウにロシアの無人機攻撃、4人死亡・19人負傷 

ワールド

米連邦政府職員数が10年ぶり低水準、トランプ氏の縮

ビジネス

中国12月CPI、3年ぶり高い伸び PPI下落鈍化

ビジネス

中国AI企業ミニマックスが香港上場、株価50%高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中