最新記事

老後資金

退職後に生活水準の低下をどう防ぐか?──リバース・モーゲージなど金融商品の活用について考える

2019年11月1日(金)17時00分
高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)

nissei191029_RM2.jpg

公的年金の一部を借入金の返済に充てる必要性があるほど多額な借入金の大部分は、住宅ローンである。50代の持家率は87%と高く、50代の借入金残高の約9割が、住宅や土地のための借入金である(総務省 家計調査報告(2018年))。そして、退職金を受け取った人のうち退職金の主な使い道が住宅ローンの返済であると回答した人の割合が20%でかつ、保有資産が少ないほどこの割合が高いといった調査結果もある(図表2)4。

借入利率を上回る運用利回りを確保できるならば、借入金の返済に充てるよりも資産運用に回す方が有利である。しかし、借入利率を上回る運用利回りを確保できることは稀5で、通常は、借入利率を上回る運用利回りを目指すためには、相応の資産価格変動リスクを受け入れる必要がある。理屈上は借入金を相殺した純資産残高を資産運用に回すよりも、借入金の返済に充てずに金融資産残高を資産運用に回す方が、投資額が大きいため資産価格が上昇した場合の利益が大きい。しかし、運悪く資産価格が下落した場合の損失も大きい。一般的には資産価格が下落した場合の損失を回避したいと考える(リスク回避的)ので、70歳まで働いてもなお退職後に生活水準の低下が見込まれる世帯の大部分は、資産運用に回せる資金を保有していないと考えているであろう。そこで、金融資産額残高や収入に照らして多額の住宅ローンが残っており、かつリスク回避的な世帯を想定し、純資産残高には勘案されていないが住宅ローンにより取得しているはずの住宅資産の活用の効果を評価する。

――――――――――
3 退職一時金及び企業独自の退職年金をまとめて退職金を記載する
4 野尻哲史「高齢者の金融リテラシー~生活に不安を抱えながらも資産の持続力に楽観的~」フィデリティ退職・投資教育研究所
5 住宅ローン減税やiDeCoなどの節税効果が期待できる場合や、固定金利で借入れた後に市場金利が大きく上昇した場合など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する

ワールド

ロシア、国防次官を収賄容疑で拘束 ショイグ国防相の

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中