最新記事

老後資金

退職後に生活水準の低下をどう防ぐか?──リバース・モーゲージなど金融商品の活用について考える

2019年11月1日(金)17時00分
高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)

就労延長のほか、リバース・モーゲージなどの資産運用は選択肢になるか Takasuu/iStock.

<退職後も退職前と同じ生活水準を保ちたければ、75歳や80歳まで働く人も少なからず出てくるのがこれからの現実。リバース・モーゲージや長寿年金による資産運用で、老後が少しでもラクになるのか可能性を探った>

資産活用という選択肢

退職後も退職前と同程度の生活水準を維持し、かつ生存中に資産が枯渇してしまう可能性をある程度抑えるためには、かなりの資産を用意しなければいけない。しかし、退職までの期間が相対的に短い50代であっても、十分な資産を用意できている世帯は少なく、およそ半数の世帯は退職後に生活水準が10%以上低下する可能性が高い1。十分な資産を用意できていない世帯にとって、就労延長は生活水準を維持するための一つの選択肢であるが、3割程度の人は70歳まで働いても退職後に生活水準が10%以上低下することが見込まれる2。75歳や80歳まで働くことも選択肢の一つであるが、住宅資産を含む資産の活用に資する金融商品も選択肢の一つとして検討することを提案したい。

就労延長しても生活水準の低下が見込まれるのはなぜ?

はじめに、70歳まで働いてもなお退職後に生活水準の低下が見込まれる世帯の特徴を二つの観点で確認する。一つ目は、賃金の後払いという制度設計ゆえに、老後の生活資金を強制的に貯蓄する機能を有する退職金3の有無という観点で、もう一つは借入金残高の状況という観点だ(図表1)。

nissei191029_RM1.jpg

まず、老後の生活水準の準備状況により、50代世帯を4つのグループに分けて、グループ毎に退職金や借入金の状況をみてみる。すると、老後の生活資金の準備が不十分な世帯グループほど、退職金が無い世帯の割合が高い。しかし、老後の生活資金の準備が最も十分な世帯グループ(グループ1)と最も不十分な世帯グループ(グループ4)との差は、退職金の有無より借入金の有無の方がはるかに大きく、グループ4のうち借入金がある世帯は9割を超える。これは、老後の生活資金の準備状況に応じてグループ化しているのだから当然の結果であると言える。

特筆すべきは、グループ4の平均借入金残高(各グループのうち、借入金を有する世帯に限った平均値)が2,000万円程度に及ぶことである。このグループ4の大部分は、借入金残高が、現在保有する金融資産残高に今後期待できる資産残高の積み上げ(現在と同程度の収入維持が期待できる今後5年間は所得の10%を貯蓄に回し、かつ年率2.5%で運用して得られる額)を加え、更に退職金見込額も加えても借入金を返せない状態にある。このため、公的年金の一部を借入金の返済に充てる必要性がある。ちなみに、今後5年間の貯蓄する割合を収入の10%から30%に引き上げてもなお、公的年金の一部を借入金の返済に充てる必要性がある世帯も少なくない。しかしながら、現在50代で貯蓄割合が30%以上の世帯は5.8%に過ぎず(金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果))、貯蓄割合の更なる引き上げは容易ではない。

――――――――――
1 基礎研レポート「50代の半数はもう手遅れか-生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する
2 基礎研レポート「就労延長で生活水準はどうなるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁

ワールド

加州がWHO感染症対応ネットワークに加盟、米の正式

ビジネス

焦点:中国、サービス消費喚起へ新政策 カギは所得増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 8
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 9
    湿疹がずっと直らなかった女性、病院で告げられた「…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中