最新記事

テロ

州警察本部で自爆テロ インドネシア、ISメンバー帰還も含めテロ対策が緊急課題に

2019年11月13日(水)16時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシア・メダンで発生した自爆テロの実行犯とみられる男 KOMPASTV/YouTube

<1年半ぶりにインドネシアを震撼させたテロ事件は、新たな危機への号砲なのか?>

インドネシア・スマトラ島北スマトラ州の州都メダンで13日午前8時40分(日本時間同10時40分)ごろ、ワナサリ地区にある州警察本部で爆発があり、これまでのところ自爆犯とみられる1人が死亡、少なくとも警察官4人と市民2人の6人が負傷、近くの病院に搬送されて治療を受けている。

現地からの報道などによると爆発は警察本部敷地内の麻薬捜査課付近の駐車場で起き、バラバラになった遺体が現場に残されていたことから自爆テロによるテロ事件で、容疑者1人は現場で死亡したとみられている。

爆発音は警察本部から半径約500メートルまで届くほどで、周辺の住民はショックを受けていると民放テレビ各局などは通常番組を中断して臨時ニュースで伝えている。

国営アンタラ通信によると、目撃者などは自爆テロ犯が配車サービスによるバイクタクシーの運転手を装って警察本部敷地内に侵入したとしており、警察の警備を欺いて犯行に及んだ可能性を指摘している。

州警察が公開した敷地内に設置された監視カメラの映像では、緑色と黒色の配車会社運転手のユニフォームをとみられるジャケットを着て、メガネをかけた若い男が映っている。この男は大きなリュックを背負っており、カメラの映像では歩いているこの男から赤い炎につづいて白煙が立ち上る様子がとらえられている。

インドネシアではオートバイクや乗用車をスマートフォンのアプリで呼んでタクシー代わりに乗車するほか、荷物や書類の集配、配達さらに食品配達やレストランなどの出前代行などに広くこうしたネットシステムが利用されており、今後はこうしたサービスにも警戒が高まる可能性が指摘されている。

新政権、対テロ対策が急務に

インドネシアでは10月23日にジョコ・ウィドド大統領による2期目の政権が誕生したばかりで、新政権のテロ対策への取り組みが急務であることが浮き彫りとなった。

新政権誕生の直前10月10日には当時のウィラント調整相(政治・法務・治安担当)が刃物で刺され重傷を負う事件があり、治安当局は刺傷事件容疑者が中東のテロ組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓うインドネシア国内のテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーであるとして、国内各地でJIDメンバーの摘発を進めていた。

その過程でジャワ島のソロやジョグジャカルタでJIDが自爆テロを計画していたことも明らかになっていたが、メダンでのテロ計画は当時の捜査では浮上していなかった。

今回のメダンでの自爆テロに関する犯行声明はこれまでのところ出されていないが、自爆という犯行の方法、州警察本部という標的などから何らかのテロ組織が関与しているのは間違いないとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設

ビジネス

英BP、第3四半期の利益が予想を上回る 潤滑油部門

ビジネス

中国人民銀、公開市場で国債買い入れ再開 昨年12月

ワールド

米朝首脳会談、来年3月以降行われる可能性 韓国情報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中