最新記事

日本政治

政府、4兆円規模の災害・経済対策浮上 強靭化計画の規模など焦点

2019年11月15日(金)18時00分

政府が現在策定中の災害・経済対策の規模として、最低4兆円程度が必要との意見が出ている。写真は安倍首相。バンコクで4日撮影(2019年 ロイター/Soe Zeya Tun)

政府が現在策定中の災害・経済対策の規模として、最低4兆円程度が必要との意見が出ている。これに伴って昨年打ち出した国土強靭化3カ年計画の延長・改訂も検討されているが、議論は収束していない。政府は今月末を目指し、とりまとめを急ぐ方針だ。

6兆円の崖を意識

政府は国内景気が緩やかに回復しているとの見解を堅持しているが、安倍首相は8日、早期の経済対策策定を指示した。1)災害対策、2)中小企業対策、3)東京五輪・パラリンピック後を見据えた景気対策、の3本柱からなる。

対策規模に関し、自民党の甘利明税制調査会長が11日の講演で、2018年度の補正予算と19年度当初予算の特別枠が合わせて約6兆円であった点を指摘。今年の景気は「昨年より少なくとも良い状況とはいえないはずだ」と述べ、「昨年より大きく劣後する対策に意味はあるのか検証すべき」と、6兆円と同等か、それ以上の対策が必要との見解を示した。

これに先立ち7日に開催された政府の経済財政諮問会議でも、竹森俊平議員(慶大教授)が「19年度予算で臨時・特別の措置で2兆円、18年度補正予算で災害対応等で4兆円、合わせて6兆円あって、これが2020年に付いていないとすると、突然、大きく公需が落ちる」と発言したことが議事要旨で明らかになっている。

政府関係者の間では、「消費増税対策としての2兆円の臨時・特別の措置は20年度も継続するので、6兆円予算が減ることはない」(経済官庁幹部)との説明もあるが、既定路線の2兆円を除いて「4-5兆円の規模は必要というのが相場感だ」(別の官庁幹部)との説明が多い。

新・強靭化対策の構想も

しかし対策の詳細が煮詰まるのには一定の時間がかかりそうだ。第2・第3の柱に関して、学校用パソコン普及、日米通商協定を受けた農業対策など様々な案が議論されているが、「各項目とそれぞれの予算規模の議論はこれから」(内閣府)とされる。

第1の柱である災害対策についても様々な議論がある。政府が昨年末に策定した国土強靭化3カ年緊急対策(事業規模7兆円、国費3兆円強)の延長が与党内の主論で、「2年、3年、5年延長説がある」(与党関係者)。

しかし20年度を最終年度とする現行の3カ年対策の中身は、昨年の災害被害を反映し、空港の電力対策や学校のブロック塀対策などが中心となっており、台風19号で多数発生した河川氾濫などの比重は相対的に小さくなっている。このため遊水地の整備など河川氾濫対策に重点を置き、「切り口を変えた形の強靭化対策を別個に打ち出す可能性もある」(与党幹部)という。

財務省は、人手不足による公共工事の消化率低下を背景にこれまでのところ3カ年対策の延長に慎重だが、「これまで予見できない災害が発生したと判断すれば柔軟に対応する可能性がある」(幹部)と含みを持たせている。与党内では「10年程度の強靭化対策が必要」(自民幹部)との意見もあるが、2─3年延長説が多い。「あまり長期のインフラ計画を作ってしまうと、次の政権の経済政策が作りにくくなる」(別の自民幹部)との見方もあるという。

(編集:石田仁志)

竹本能文

[東京 15日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

外国企業復帰、ロシアの利益になるかどうか注視=検事

ワールド

石破首相、NATO首脳会議出席取りやめへ 岩屋外相

ワールド

豪、米のイラン攻撃を支持 外交再開呼びかけ

ビジネス

独アウディ、トランプ関税対応で米での工場建設案が浮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中