最新記事

弾劾調査

<弾劾調査>トランプを恐れ縮み上がる国務省、いじめや脅しも

5 Takeaways From the Trove of Impeachment Testimony Released Monday

2019年11月5日(火)17時00分
エイミー・マッキノン、ロビー・グレイマー

トランプに駐ウクライナ大使を解任されたヨバノビッチ(中央)の証言が公に Jonathan Ernst-REUTERS

<公表された米外交官2人の証言記録で注目すべき5つの点>

ドナルド・トランプ米大統領の弾劾調査を行っている米下院の委員会は11月4日、10月に非公開で実施された政権関係者の宣誓証言のうち、2人分の記録を公開した。トランプがウクライナに対して、ジョー・バイデン前副大統領とその息子をめぐる疑惑の調査を行うよう圧力をかけたとされる問題に、国務省がいかにして利用されたかを語った内容だ。バイデンは2020年の大統領選で、トランプと本選を争う民主党の有力候補と目されている。

野党・民主党が多数派の議会下院は10月31日、大統領の弾劾調査を正式に進める決議案を可決。これで公聴会の実施や証言記録の公開が可能となり、第1弾としてマリー・ヨバノビッチ元駐ウクライナ大使と、マイク・ポンペオ国務長官の元上級顧問であるマイケル・マッキンリーの証言記録が公開された。

この中で注目すべき5つの点を紹介する。ちなみに本記事について国務省にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

1.「国務省の上層部はトランプのツイートを恐れていた」

5月にトランプに解任されたヨバノビッチは、それに先立つ3月後半、米国内の保守派から「反トランプの偏った姿勢の持ち主」と批判されていた。

ヨバノビッチは、ウクライナ政府に対してバイデンとウクライナのエネルギー会社の役員だった息子のハンターに関する調査を求めていたトランプの顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニと対立した。ジュリアーニは、大統領と国務省に対してヨバノビッチの解任を働きかけたことを認めている。

ヨバノビッチは宣誓証言の中で、相次ぐ攻撃で大使としての信用を失ったため、ポンペオに「自分を支持する声明を出して欲しい」と依頼したことを明かした。だが声明は出なかった。ポンペオがトランプの反撃を恐れていたからだ、とヨバノビッチは語った。

多くの政府関係者が、トランプの「反撃ツイート」の標的にされることを恐れている。ヨバノビッチの証言によれば、任期満了前に帰国命令を受けた彼女にジョン・サリバン国務副長官は、「君は大統領の信用を失ったが、何も悪いことはしていない」と告げたという。

ヨバノビッチはまた、保守派メディアが自分に対する攻撃を始めたらどう対応すべきか、ゴードン・ソンドランド駐EU米大使に相談したと話した。するとソンドランドは、解任されたくないならツイッターで大統領への支持を表明しろと答えた。

2.ショーン・ハニティが外交政策に影響力

ヨバノビッチを攻撃した保守派のひとりが、FOXニュースの司会者ショーン・ハニティだ。ヨバノビッチが「大統領を非難している」「ウクライナ当局に汚職で訴追すべきではない人物を指示した」などの根拠のない疑惑が浮上した時、国務省は最初はこれらを「でっち上げ」だと一蹴した。だがその後、国務省はこの問題について無言を貫くようになった。

<参考記事>トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
<参考記事>【写真特集】ポルノ女優から受付嬢まで、トランプの性スキャンダルを告発した美女たち

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウォン安と不動産価格上昇、過剰流動性だけが背景では

ビジネス

12月の豪消費者信頼感指数、悲観論が再び優勢 物価

ビジネス

ベトナムEVビンファスト、対インドネシア投資拡大へ

ワールド

EUメルコスルFTAに暗雲、仏伊が最終採決延期で結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中