最新記事

再生可能エネルギー

世界最大の洋上風力発電......イギリス、再生可能エネルギーが化石燃料発電を上回る

2019年10月28日(月)17時00分
松丸さとみ

イギリス、世界最大の洋上風力発電を建設 YouTube

<英国で最初の発電所が稼働を始めた1882年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回った......>

40%が再生可能エネルギーによる発電

英国における発電史上初めて、再生可能エネルギーを利用した発電量が、化石燃料を使った発電量を上回ったことがこのほど明らかになった。気象科学、気象政策、エネルギー政策に関する情報を発信する英国のウェブサイト、カーボン・ブリーフが明らかにした。

今年の第3四半期(7月、8月、9月)、風力、ソーラーパネル、バイオマス、水力など「再生可能エネルギー」による発電は、29.5テラワット時に達した。同時期、化石燃料による発電量は29.1テラワット時だった。カーボン・ブリーフは、英国で最初の発電所が稼働を始めた1882年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回ったことになるとしている。

matumaru1028b.jpg

第3四半期の全発電量に占める割合を種類別に見ると、石炭、石油、ガスによるものが約39%(内訳はガス38%、石炭と石油の合計が1%未満)だった。一方で再生可能エネルギーは、約40%(内訳は風力20%、バイオマス12%、太陽光6%など)に達した。残りの約20%のうち最大は原子力発電で、全体の19%を占めたという。

世界最大の洋上風力発電所などが後押し

再生可能エネルギーの発電量が増えた理由のひとつに、複数の発電施設が2019年に稼働を開始したことが挙げられる。ヨークシャー沖に位置するホーンシー・プロジェクト・ワンは、今年の2月に電力の供給を開始。BBCによるとこの発電所は、2020年に完成してフル稼働となった場合、世界最大のオフショア風力発電所となる。

また今年7月には、スコットランド最大のオフショア発電所となるベアトリス・オフショア風力発電所が稼働を開始した。

一方で英国政府は、炭素捕捉技術を採用していない石炭火力発電所は2025年までにすべて閉鎖する方針を打ち出している(ロイター)。2020年3月には英国全土で稼働している石炭火力発電所は4カ所のみとなるため、カーボン・ブリーフは、2025年の目標よりもかなり速いペースで閉鎖が進んでいるとしている。

ただし、2019年を通年で見た場合に、再生可能エネルギーが化石燃料を上回る可能性は低いとの見通しをカーボン・ブリーフは明らかにしている。

2050年の目標達成は見込み薄

ガーディアン紙によると、エネルギー担当閣外相のクワシ・クワーテング氏は、再生可能エネルギーの発電量が化石燃料を上回ったことは、2050年までに英国の気候変動への寄与を終わらせるという目標に向けたマイルストーンに沿っているとの見解を示した。

英国は、2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出を実質的にゼロとする)になることを法的義務としている。「英国は1990年以来、経済を3分の2成長させた一方で、炭素排出量をすでに40%削減した」とクワーテング閣外相は自信をのぞかせた。

しかしカーボン・ブリーフは、2050年までにカーボンニュートラルにするという目標を英国が達成できる可能性は低いとの考えを示している。電力セクターでの進展をもってしても、暖房や運輸からの炭素排出を抑えない限り、達成できないという。

なお、第3四半期に12%を占めたバイオマスに関しては、ゼロカーボン(炭素排出量ゼロ)にはならない。場合によっては化石燃料よりも二酸化炭素の排出量が増えるため、英独立行政機関である気候変動委員会(CCC)は、大規模なバイオマス発電所からは「離れる」べきだとの見解を示しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、AI・エネルギーに700億ドル投資へ 

ビジネス

英中銀総裁「不確実性が成長を圧迫」、市場混乱リスク

ビジネス

米関税措置、国内雇用0.2%減 実質所得も減少=S

ワールド

ゼレンスキー氏、スビリデンコ第1副首相を新首相に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中