最新記事

アップル

アップル、香港「警察追跡アプリ」の配信を停止 

Apple's Decision to Pull HKmap is 'Political Decision to Suppress Freedom'

2019年10月11日(金)16時30分
ジェイソン・マードック

アップルが配信をやめたHKmapの地図アプリ Tyrone Siu-REUTERS

<「暴徒支援」と怒る中国政府に配慮か?「自由を抑圧する政治的な決定」に批判>

米アップルは10月9日、香港で警察やデモ隊の位置情報を把握するのに使われているモバイルアプリ「HKmap.live」を、自社のアプリ配信サービス「App Store」から削除した。同アプリの開発者たちはこれを、「自由を抑圧する政治的な決定」だとして反発している。

削除された「HKmap.live」 South China Morning Post-YouTube


同アプリは、香港で続いている反政府デモの参加者たちが、警察がいる場所や街頭デモが激化している場所をリアルタイムで把握するために使っていた。

アップルは当初、同アプリの配信は行わないとしていたものの、4日にこの方針を覆して配信を開始。中国の国営メディアはこれを受けて、同アプリは「有害」で「中国国民の感情を裏切るもの」だと批判していた。

今回の削除決定についてアップルは、このアプリが同社のガイドラインと地元の法律に反して使われていたことが理由だと主張した。

「警察官がいる場所を示すこのアプリが、警察を待ち伏せし、公共の安全を脅かすために使われていることが確認できた。犯罪者が、警察がいない地域を狙って住民に被害を及ぼしたケースもあった」とアップルは声明で述べた。

開発チームは「証拠がない」と反発

さらにアップルは、同アプリが「香港の法執行機関と住民を危険にさらすような方法で使われている」とも説明した。だがHKmapの開発者チームは公式ツイッターのアカウントに「アップルと香港警察の主張には賛同できない」し、彼らの主張を裏付ける「証拠もない」と投稿した。

「App Storeのユーザレビューの大半は、HKmapによって治安が良くなったと言っている。アプリの削除は明らかに、香港市民の自由と人権を抑圧するための政治的な決定だ」

本記事の執筆時点では、同アプリのデスクトップ版は今も入手可能な状態にある。

香港の反政府デモをめぐっては、これまでにも複数の企業の対応に批判の声が上がっている。米ゲーム会社ブリザード・エンターテインメントは、香港の抗議デモに支持を表明したプレーヤーに対してeスポーツ競技大会への参加を禁じる判断を下し、激しい反発を招いた。

<参考記事>中国に謝罪したNBAに米議員が猛反発
<参考記事>中国人民日報、アップルを非難 香港デモ隊が使う地図アプリ提供めぐり

一連のデモは、当初は香港で逮捕された容疑者の身柄を中国に引き渡しすことを可能にする条例改正案に抗議するものだったが、今では民主化を求める運動へと発展している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中