最新記事

2020米大統領選

ウクライナ疑惑を乗り切ってもトランプ再選には黄信号?

Come and Get Me

2019年10月8日(火)19時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

だがトランプの側近グループは必ずしも楽観的ではない。複数のホワイトハウス情報筋によると、ミック・マルベイニー大統領首席補佐官代行、長女のイバンカ・トランプとその夫ジャレッド・クシュナーなどは、ムラー報告書の提出後は「平穏な時間」が続いてほしいと希望していた。強い経済の波に乗り、そのままの勢いで大統領選に突入したい考えだったと、側近の1人は言う。

疑惑やスキャンダルが次から次にメディアで取り上げられる現状には、選対スタッフの一部からも懸念の声が出ている。ロシアとの「共謀」、大統領の地位をビジネスに利用した疑惑、そしてウクライナ問題......。このままでは無党派層と共和党穏健派が逃げ出しかねない。

側近たちは、有権者が「トランプ疲れ」から「民主党良識派」(あるトランプ選対幹部の言葉)にくら替えする事態を懸念している。もっと具体的に言えば、ずばりバイデンだ。

実際、ほとんどの世論調査では、大統領選の本選挙がトランプ対バイデンになった場合はバイデンが勝つという結果が出ている。2016年の大統領選でトランプ勝利の決め手になった中西部でもバイデンの人気は侮れない。

少なくとも、いまウクライナ疑惑が浮上したことで、トランプ陣営が「平穏な時間」を享受できなくなったことは確かだ。

トランプがウクライナのゼレンスキーに電話したのは、7月のムラーの議会証言により、ロシア疑惑での弾劾の可能性が事実上なくなった次の日だった。「大統領選の年に向けて状況が好転しそうだと思ったのに」と、ある幹部は落胆を口にしている。

トランプは、ウクライナ疑惑を全面否定で切り抜けるつもりらしい。つまり、ゼレンスキーに電話した際、軍事援助などの支援をちらつかせバイデンと息子の不利になる捜査を求めた事実はないと主張している。電話会談の記録を見れば、自らの潔白は明らかだという。

むしろ、自分こそ、そうしたやり口の犠牲者だとトランプは言いたいらしい。オバマ前政権が外国政府に働き掛けて自分を追い落とそうとした、というのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中