最新記事

2020米大統領選

ウクライナ疑惑を乗り切ってもトランプ再選には黄信号?

Come and Get Me

2019年10月8日(火)19時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

弾劾のピンチなどどこ吹く風。批判には全力で反撃するのがトランプ流だ PHOTO ILLUSTRATION BY C.J. BURTON FOR NEWSWEEK

<ウクライナ疑惑で弾劾の可能性が再浮上。本人は強気だが、選対スタッフには懸念の声が>

民主党のナンシー・ペロシ下院議長がドナルド・トランプ米大統領弾劾に向けた調査開始を表明した翌9月25日、トランプ本人は「上機嫌で戦う気満々」だったと、2人の側近は言う。

問題になったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話協議の内容を公開するとトランプは言った。同日の国連での記者会見で語ったように「圧力はなく」、交換条件の話も出なかった。政治的ライバルで民主党のジョー・バイデン前副大統領に関する醜聞が欲しかったが、見返りに何かを提供すると話したことはない――。

ウクライナ問題が弾劾調査の中心テーマになることがはっきりすると、上機嫌は怒りに変わったと、側近は言う。トランプをもっとよく知る面々はピンときた。反撃が始まるぞ。

長年の政治的助言者で現在ロバート・ムラー特別検察官(当時)の捜査に絡んで起訴されているロジャー・ストーンは、2016年の大統領選中にこう語っている。「彼は究極のカウンターパンチャーだ。攻撃されれば、必ず反撃する。それも徹底的に」

トランプの「ファイター」としての顔は、2016年に熱心な支持者のハートをつかんだ要素の1つだ。ほとんどの場合、このイメージは政治的にプラスだった。中国との貿易面での戦い、ワシントンの特権層や既得権益を突き崩すための戦い、不法移民を制限する戦い......。

ビジネスの世界にいたときから、けんかっ早いスタイルはトランプのトレードマークだった。「私は敵がいる状況が好きだ。敵と戦い、徹底的にやっつけるのが好きだ」と語ったこともある。大統領就任後もスティーブ・バノン首席戦略官(当時)やスティーブン・ミラー上級顧問のような側近の一部は、この闘争本能をあおり立ててきた。

「(トランプは)最初の日から、政敵に対して『戦時体制』を取っていた」と、あるホワイトハウスのスタッフはオフレコを条件に言った。「何のためらいもなくウクライナ大統領にバイデンと息子の醜聞を尋ねたように見える理由の1つはそれだろう。この好戦的姿勢は今では日常になっている」

穏健派が逃げ出す恐れ

「民主党は輝かしい実績を上げたトランプ大統領に太刀打ちできない」と、トランプ陣営の選対責任者を務めるブラッド・パースケールは言った。「だから、バイデンのスキャンダルをトランプの問題に見せようとしている。そんなことをしてもトランプ大統領の支持者を勢いづけ、(2020年の大統領選で)大統領を圧勝させるだけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の発言要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中