最新記事

中東

イラク反政府デモ、1週間で死者110人 貧困地区で新たな衝突

2019年10月8日(火)11時20分

イラクの反政府デモは発生から1週間が経過し、合計死亡者は110人に達した。写真は燃えるタイヤの間を走るデモ参加者。10月3日、バグダッドで撮影(2019年 ロイター/Wissm al-Okili)

イラクの反政府デモは発生から1週間が経過し、合計死亡者は110人に達した。大半はデモの参加者で、治安部隊の強圧的な取り締まりが原因だ。6日夜にも貧困層が多く住むバグダッド東部サドルシティーでデモ隊と治安部隊が激しく衝突し、15人が亡くなった。7日遅くにはこうした当局の暴力に抗議する人々が集まり始めた。

サドルシティーにはバグダッドの人口800万人の3分の1が集中し、多くの人は電気や水道もなく、職に就いていない。このためいったん騒乱状態になると、鎮圧が難しくなることが過去の例で示されてきた。

ただ7日の段階で見ると、状況はやや改善している。軍部隊は撤収し、警察にパトロールが引き継がれた。過去に反政府活動を組織したシーア派聖職者モクタダ・アルサドル師の支持者らとの正面衝突を避けたいと、当局が考えている様子がうかがえる。

ロイターがサドルシティーの住民の1人に電話取材したところでは、路上は終日落ち着いていた。地元の民兵が被害状況を調べるためにこの地区を訪れ、警察は周辺に配置されていた。

一方、当局がデモを無理やり抑え込んだり、メディアを攻撃していることについては、通常は細かい政治問題には口出ししないサレハ大統領がテレビで異例の非難演説を行い、治安部隊の暴力行為の調査を要望した。

さらにサレハ氏は、デモで示された不満に対処するために閣僚の交代や選挙改革を求め、暴力の被害を受けた人への補償がなされるべきだと付け加えた。

国営テレビによると、政府当局もデモの取り締まりで「不適切に行動した」治安部隊のメンバーには相応の責任を取らせる方針を表明している。

[バグダッド 7日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:物価高はトランプ氏のせいか、支持者が大統

ワールド

ベネズエラ原油の供給不安、最大輸入国・中国の影響は

ビジネス

来年2月の豪利上げを予想、CBAとNAB

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中