最新記事

香港デモ

香港行政長官「逃亡犯条例の撤回、中国は尊重・支持」

2019年9月5日(木)16時45分

香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム・写真)行政長官は会見し、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を中国が「理解し、尊重し、支持している」とし、今回の措置で香港が社会不安から「前進」し、政治危機の解決につながることへの期待を示した。同日香港で撮影(2019年 ロイター/AMR ABDALLAH DALSH)

香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は5日会見し、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を中国が「理解し、尊重し、支持している」とし、今回の措置で香港が社会不安から「前進」し、政治危機の解決につながることへの期待を示した。

長官は前日、香港の大規模抗議活動のきっかけとなった逃亡犯条例改正案を正式に撤回すると表明した。

正式撤回の表明を受けて、抗議活動者や一部の議員からは早くも、遅きに失した対応で、事態収拾には不十分だとの批判が出ている。

長官は、正式撤回になぜこれほど時間がかかったのかとの質問には答えず、「今回の措置を心変わりと表現するのは正確ではない」と述べた。

条例案の正式撤回について長官は、中国政府の支持を得て香港政府が決定したと発言。「すべてのプロセスにわたって、中央人民政府は、なぜ撤回が必要かを理解しているとの立場をとった。中央政府は私の見解を尊重し、一貫して私を支持してくれた」と語った。

長官は、条例案の正式撤回のほか、現在の混乱の原因となっている根強い経済・社会・政治問題を話し合う市民との対話の枠組みをつくる方針なども示した。「社会の不満に対処する方法を模索し、解決策を探る必要がある」と述べた。

条例案の撤回は、デモ参加者の「5大要求」の1つだった。他の要求は、抗議活動の暴動認定の取り消し、逮捕された抗議者の釈放、警察の対応を調査する独立委員会の設置、民主的な選挙の実現。

デモ参加者はすべての要求を満たすよう求めており、特に独立委員会の設置を重視しているが、長官は5日、既存の独立警察苦情審議会の調査で十分対応できると主張した。

香港大学で抗議デモに参加している学生の1人は「我々は皆、政府と警察が生み出した人道上の危機に苦しんでいる」と発言。デモ参加者は「人間の鎖」をつくり「5大要求、不可欠」「香港に自由を、現代の革命を」と叫んだ。

7日には再び空港で抗議活動が予定されている。

中国政府系の英字紙チャイナ・デーリーは5日、デモ参加者にはもはや暴力的な行為を継続する理由はないと論じた。

長官は5日午後に中国の広西チワン族自治区に向かう。

※内容を追加しました。

[香港 5日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20190910issue_cover200.jpg
※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。



ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BMW、次期CEOに生産部門トップ 新世代EV開発

ワールド

ハンガリー、米国と新たな金融協力協議開始へ=外務貿

ワールド

ポーランド初の原発建設に国庫補助、EUが承認 36

ビジネス

国内企業物価、11月は前年比2.7%上昇 農林水産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中