最新記事

韓国政治

文在寅「超側近」チョ・グクの疑惑がここまで韓国人の怒りを集めるのはなぜか

2019年9月2日(月)18時50分
テジョン・カン

文在寅が次期法務部長官(法相)に指名したが Henrik Montgomery/TT News Agency/via REUTERS

<法相に指名した曺国(チョ・グク)の娘に大学不正入学疑惑などが浮上し、大統領の支持率は就任以来最悪レベルに落ち込んだ。文在寅の致命傷となるのか>

韓国の最新の世論調査の1つによれば、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が次期法務部長官(法相)に指名した曺国(チョ・グク)の就任に反対する声が60%に達した。前週は約40%だったことからすると、急激な増加だ。何が変わったのか。

文の「超側近」で民情首席秘書官を務めていた曺については、ここ数週間、疑惑やスキャンダルが噴出してきたが、どれも法相就任を妨げるほどのものではなかった。だが曺の娘に関する一連の疑惑が浮上するにつれて、雰囲気が変わり始めた。

曺の娘は名門とされる高麗大学を卒業しているが、入学の過程で優遇措置を受けた疑いが持たれている。

彼女は高校生だった2008年に檀国大学の医学研究所でわずか2週間インターンをしただけで、有名な医学雑誌に掲載された病理学論文の主要著者として名を連ねた。2010年に高麗大学に筆記試験なしで入学できたのは、この論文のおかげではないかといわれている。

しかも、釜山国立大学医学専門大学院在籍中の2016〜18年には1200万ウォン(約106万円)の奨学金を受け取っている。父親の地位のおかげで大学から特別扱いされたのではないかと疑う声は少なくない。

曺の娘に関する疑惑に国民の怒りは高まっている。さらに言えば曺の法相就任への反対は、彼が重要な役割を果たしてきた文政権が、正義、公正、平等を韓国社会にもたらすという約束を果たしていないことへの失望を示すものだ。

3月の世論調査では、韓国では法が公正に適用されていないと考える人が回答者の88%に上り、韓国で出世することは以前より困難になっていると答えた人が80%いた。

社会に広がる怒りと諦め

さらに回答者の79%は、韓国社会ではいくら努力しても社会・経済的な地位の向上が期待できないと答えた。72%は社会的競争が公正に行われていないと判断しており、64%は不正なことをしても罰を受けない人が多いと考えている。

こうした見方は広く行き渡っており、世代や地域、階層で大きな違いはなかった。言い換えれば多くの韓国人は、韓国社会には個人の力では太刀打ちできないような特権と不公平な慣行がまかり通っていると考えているわけだ。

批判が増大しているにもかかわらず、曺は最近、文政権の司法改革の実施を支援するために法相への就任を目指し、国会の人事聴聞会に出席して疑惑について説明すると表明した。与党「共に民主党」は曺が国民とじかに話をすることができるよう、曺のための別の聴聞会を設けることも検討している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中