最新記事

韓国【文在寅政権の成績表】

韓国・文在寅政権が苦悩する財閥改革の現在地

2019年9月27日(金)17時30分
前川祐補(本誌記者)

――一族経営は韓国財閥を韓国財閥たらしめている大きな特徴?
1つの特徴であることは間違いない。中華系や東南アジア系の財閥との比較研究を詳しく調べる必要はあるものの、少なくとも日本の財閥とは大きく異なる特徴だ。

――安倍グループ長ご自身はどのような対策が望ましいと考えるか。
いわゆる「事後規制」をより重視すべきではないかと考えている。すなわち、財閥が不正を働いた場合に厳しく取り締まることだ。そのためには金尚祚氏も当初重視していた、公取委の機能強化が対策の1つになるだろう。大上段に構えた改革よりも、そうした地道な動きの方が重要だ。

従来の財閥政策は「事前」規制を重視する傾向があった。つまり、財閥は経済活動においていろいろな弊害を伴うので、弊害が出ないように事前に規制を掛けようという対策だが、そうした政策は往々にして副作用を伴うし、抜け道を生むことにもなる。実際、あまり効果が出ていない。

――今後の財閥改革において国民の溜飲が下がるような目玉政策はある?
財閥改革においては最終的にどういう形に収まれば望ましい絵姿なのか、コンセンサスがないのが難しいところ。こうなればいいという理想の形は誰も提示していないし、あまり議論されてもいない。

経済活動の多くが財閥系企業に集中しているので、その度合いを下げたほうがいいという程度の合意は得られているが。シンプルな持ち株会社を作るというのも、そうすれば従来よりは適切な形態になるのではないかという、「ぼんやりとした」絵姿があるのみだ。

――実際、理想形の模索は難しいところだ。
あまり型にはめてしまうと企業の事業展開に障害が出かねない。実際、金尚祚氏も具体的な絵姿を提示しているわけではなく、曖昧にしている部分も多い。今のままではよくないという点では一致しているが、理想の着地点は見えていない。

論者によっては、オーナーによる財閥所有が害悪なので、日本の旧財閥のように特定のオーナーをなくす改革が必要と言う人もいるが、そこは財閥にとって「マジノ線」なので闘争が生まれてしまう。そうなると改革は現実味を失う。実際、政府もそこまでは言及していない。

――政府、財閥、国民それぞれの立場で財閥改革に対して抑制的だ。
何かあれば財閥(に頼る)という部分は残っている。景気が悪くなれば財閥を頼りにせざるを得ない面があり、南北融和において経済協力をするにしても財閥の力を借りざるを得ない。日韓の貿易問題が起きると財閥支持の声も出たりする。

koreamoon.jpg

財閥改革に対する支持を得て当選した文だったが...... REUTERS/Kim Hong-Ji

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

物価目標の実現「着実に近づいている」、賃金上昇と価

ワールド

拙速な財政再建はかえって財政の持続可能性損なう=高

ビジネス

トヨタの11月世界販売2.2%減、11カ月ぶり前年

ビジネス

予算案規模、名目GDP比ほぼ変化なし 公債依存度低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中