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ドイツに存在する「架空都市」の非存在を証明せよ⁉

2019年8月27日(火)18時15分
ソール・ジェンセン

ジョークのおかげで、特徴がないという特徴を手に入れたビーレフェルト WALDEMAR MILZ/ISTOCKPHOTO

<首相や市長も認める「架空の都市」ビーレフェルト、その存在を国民に信じ込ませる組織があるという陰謀論まで蔓延している>

ビーレフェルトという都市は実在しない──その決定的な証拠を最初に提示した者に110万ドルを与える。こう発表したのはドイツ西部に位置するビーレフェルト市自身だ。

この発表を理解するには、ドイツではおなじみの同市に関するジョークを知る必要がある。ここは観光名所も地域的な特色もない地味な町。それもあって、本当はこんな都市は存在してない、と言われているのだ。

発端はアヒム・ヘルトという大学生による、1993年のネット上の書き込みだ。彼はビーレフェルトから来たという人物に会ったとき、「信じられない」という意味の慣用句を言ったという。だがこの慣用句は、文言をそのまま受け取ると「それは存在しない」という意味になる。

これがネット上の「定番ネタ」となり、ビーレフェルトが架空の都市だというジョークは全国的に定着した。1999年には市議会が、同市は実際に存在するという声明を出したが、それも4月1日のエイプリルフールのことだった。2012年にはメルケル首相が、同市での会合について語った際に「もしそこが存在するなら」と付け加えた。

「架空の都市」の実在を国民に信じ込ませる組織がいるという陰謀論も、ジョークとセットになっている。実行役は、邪悪な目的を持った「彼ら」という名前の組織だという。ほかにも外国のスパイ組織説や宇宙人説もある。

「ビーレフェルト出身者を知っているか?」「ビーレフェルトに行ったことがあるか?」「ビーレフェルトに行ったという人を知っているか?」という3つの質問のどれかにイエスと答えた者は陰謀の一味だとされる。

実際のビーレフェルトは800年の歴史を持ち、人口34万を誇る立派な都市だ。だが、市長も「会話を始めるきっかけになる」とこのジョークを歓迎している。「そこから、私たちの市がいかに美しく、素晴らしいかを話し始めることができる」

<本誌2019年9月3日号掲載>

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