最新記事

サミット

G7サミット最大の障害は「予測不能」なトランプ×ジョンソン

2019年8月23日(金)12時43分

フランスが議長国となる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が、仏南西部ビアリッツで24─26日の日程で開催される。写真は2017年9月、ニューヨークの国連本部で握手するトランプ米大統領(右)と当時英外相のジョンソン氏(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

フランスが議長国となる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が、仏南西部ビアリッツで24─26日に開かれる。貿易やイラン、地球温暖化などの問題を巡って既に各国が不協和音を奏でているが、気まぐれなトランプ米大統領に加え、同じく予測不能な行動で知られるジョンソン英首相が初めて出席するため、合意形成は一段と難しくなりそうだ。

昨年カナダで開かれたG7サミットではトランプ氏が首脳宣言への署名を拒否、会議を早退し、散々な結果に終わった。今回のホスト役、フランスのマクロン大統領はその二の舞を避けるため、予め目標を低く設定している。つまり、首脳間の結束を表明できる分野で少しでも事態を進展させる腹積もりだ。逆に意見が激しく対立している問題は、必要なら合意を見送ることに「合意」せざるを得ないだろう。

マクロン氏は「われわれはフォーマットを修正しなければならない。首脳宣言はなくなり、連帯やコミットメント、フォローアップ(が示される)。1つか2つのテーマは、G7のどこかの国が署名しないと想定する必要がある」と語った。

ビアリッツ・サミットは、格差問題の議論を深めるというのが中心的なテーマで、オーストラリアやブルキナファソ、チリ、エジプト、インド、セネガル、ルワンダ、南アフリカの首脳も招待している。

ただ厳しい議論が起きるのはそれ以外の話題になる。何しろ、米中貿易摩擦は、世界的な景気低迷の懸念を強めている。欧州主要国は米国とイランの対立を何とか和らげようと苦戦。トランプ氏はフランスが提唱するIT大手を対象とした世界的なデジタル課税に熱意がないし、温室効果ガスの排出抑制に関する欧州や世界全体の取り組みにも背を向けているのだ。

インドがジャム・カシミール州の自治権をはく奪してパキスタンとの緊張が高まっていることや、香港の大規模デモについても話し合われるかもしれない。

こうした中、日本政府のある高官は「貿易摩擦で世界経済に及ぼす恐れのある影響が協議されるのは間違いない。しかしコミュニケが発表されない以上、G7のメッセージを外部に発信するのは難しい」と述べた。

トランプ氏と欧州首脳などの関係がぎくしゃくしていることを踏まえ、いったん合意されていた問題であっても、今回は最低限の基準で着地点を探っていくとみられる。

先の日本政府高官は「それが米国か他の国かはともかく、だれかが受け入れようとしない話を強引に進めるのは建設的ではない」と付け加えた。

さらに固有の問題を抱える国も多い。イタリアは20日に首相が辞任したし、カナダは選挙モードに入っている。ドイツは退任を控えたメルケル首相の国際的な影響力が低下し、英国は欧州連合(EU)を離脱するか総選挙に突入するかを間もなく選ばなければならないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ

ワールド

EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組み合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中