最新記事

コロンビア大学特別講義

9.11を経験したミレニアル世代の僕が原爆投下を正当化してきた理由

2019年8月15日(木)17時10分
スペンサー・コーヘン ※現代ビジネスより転載

1946年3月、原爆投下から半年後に撮影された広島 REUTERS

<終戦から74年を迎えた東京で、「記憶の歴史」をテーマに研究中のアメリカ人大学院生がいる。彼は約半数のアメリカの若年層と同様、原爆投下は「正しかった」と考えていた。米コロンビア大学で、ある特別講義に参加するまでは>

1945年8月6日広島に、そして8月9日に長崎に原子爆弾が投下された。74年経つ今も、その傷跡は大きく残る。

戦争の記憶 コロンビア大学特別講義―学生との対話―』(講談社現代新書)には、日本近現代史を専門とする米コロンビア大学のキャロル・グラック教授がコロンビア大で多様な学生たちと「戦争の記憶」について対話をした全4回の講義と、書きおろしコラムを収録している。

gluckbook190806ch3-cover_.jpg対話式の特別講義には、コロンビア大の学生11人~14人が参加した。育った場所が日本、韓国、中国、インドネシア、カナダ、アメリカ各地と国際性に富んだ彼らが、一人ひとりの視点から原爆も含めた「戦争の記憶」を語っている。アメリカ人学生スペンサー・コーヘン氏は、この対話に参加した1人だ。

アメリカの18~29歳の若年層では、原爆投下を「間違っていた」と考える人が45%であるのに対し、「正しかった」と考える人もほぼ同数の41%存在する(2015年の調査)。そしてコーヘン氏も、「正しかった」と考えていた一人だった。しかしこの対話を通して、自身がそれまで抱いていた原爆への意識が、大きく変化したという。

それはどういうことなのか。コーヘン氏に寄稿してもらった。

gendaibz190815-2.jpg

Spencer Cohen(スペンサー・コーヘン)/94年、ニューヨーク市生まれ。2018年、米コロンビア大学歴史学部卒、現在は東京大学大学院情報学環・学際情報学府にて「記憶の歴史」をテーマに研究中(コロンビア大の特別講義に参加した際のコーヘン、ニューズウィーク日本版2017年12月12日号より) Photograph by Q. Sakamaki for Newsweek Japan

文/スペンサー・コーヘン 翻訳/小暮聡子(ニューズウィーク日本版)

◇ ◇ ◇

原爆投下は必要だったと信じて育った

私がまだ小さかったころ、義理の祖父であるハロルドはよく「戦争」の話をしてくれた。ニューヨーク州郊外にある祖父の小さな別荘で、目の前に池が広がるベランダの椅子に腰かけながら、私は彼に、アメリカ軍の軍服を着ていたころの話をせがんだものだ。両親や弟や祖母は迷惑そうだったが、私は祖父の話を聞くのが楽しみだった。

gendaibz190815-3.jpg

コーヘンの義祖父ハロルド・チェンベンはコロンビア大学などで心理学を教え、2017年に97歳で他界した(2013年頃、ニューヨーク州郊外の別荘) 写真提供/Courtesy Cohen Family

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ・メディア、株主にデジタルトークン配布へ 

ワールド

台湾、警戒態勢維持 中国は演習終了 習氏「台湾統一

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 10
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中