最新記事

宇宙ステーション

米国防総省、モジュール型宇宙軍事基地案を募集

2019年7月9日(火)18時45分
秋山文野

1960年代にあった有人の軍事宇宙ステーション構想図 Manned Orbiting Laboratory:MOL Credit: National Museum of The US Air Force

<米国防総省が、将来は宇宙基地となるかもしれない「Orbital Outpost(軌道前哨基地)」と呼ばれる地球低軌道の自律型宇宙ステーションの構築案を米国内企業から募集している......>

米国防総省(DoD)が、「Orbital Outpost(オービタル・アウトポスト:軌道前哨基地)」と呼ばれる地球低軌道の自律型宇宙ステーションの構築案を米国内企業から募集している。将来は有人滞在も視野に入っており、文字通り宇宙基地となるかもしれない。提案は2019年7月9日まで受け付けられ、2020年度の予算で開発が始まるという。

募集要項によれば、宇宙ステーションは次のスペックが要求されている。
・1立方メートル以上の内部空間
・80キログラム以上のペイロード
・1キロワット時以上の電力供給
・100kbps以上の通信性能
・0~1気圧までの気密性能

モジュール型で拡張性を持った提案が望ましいとされ、「宇宙製造」「微小重力実験」「ロジスティクス」「ストレージ」「製造」「教育」「試験」「評価」「ペイロードホスティング」などの目的で使用されるという。

将来的には、結合機能やロボットアームやエンジンを取り付けられるインターフェース、有人/無人を含む同型の他のモジュールとの結合などの機能が求められる。さらに、軌道間の移動、低軌道以遠で放射線からの防護目的での使用といった可能性もある。

募集しているのは国防イノベーションユニット(DIU)という国防総省の部署で、最先端の技術や科学者を始めとする専門家へアクセスする窓口だ。米国で国防上の要請による宇宙開発は企業を支える重要な資金となっている。ボーイングやロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンといった旧来の航空宇宙企業はもちろん、イーロン・マスクのスペースXやジェフ・ベゾスのブルー・オリジンといった企業も、空軍の衛星打ち上げロケット計画に採用されることが大きな目標の一つだ。

1960年代の軍事宇宙ステーション

軌道上の軍事宇宙ステーションという構想は新しいものではない。1960年代には、NASAの有人宇宙計画「ジェミニ計画」で開発されたジェミニ宇宙船を基に、有人の軍事宇宙ステーション「Manned Orbiting Laboratory:MOL」を開発する構想があった。1963年当時、空軍の中での名称は「Manned Military Orbiting Laboratory(有人軍事軌道実験室)」だったが、計画発表の際にジョンソン大統領が「軍事」の語を外したという。とはいえ軍の偵察衛星シリーズを踏襲する「KH-10」のコードがつけられており、軌道上から宇宙飛行士が地上を偵察するという構想だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中