最新記事

軍事

アメリカと対立する中国が、欧州に軍事で急接近中

2019年7月9日(火)16時30分
トム・オコナー

今年4月の軍事パレードに参加した中国海軍の兵士 Jason Lee-REUTERS

<ドイツ軍とは医療部隊の合同訓練、フランス海軍とは合同訓練やスポーツ交流......軍事面でも経済面でも中国は欧州に活路を見出そうとしている>

アメリカとの貿易戦争に解決の糸口が見えないなか、中国は欧州との関係を深めている。

中国当局は、ドイツ軍の医療部隊が7月3日から2週間実施する訓練に参加するため、中国軍の医療部隊がミュンヘンに向かったことを明らかにした。16年に続いて2度目となる両国の合同訓練では、多数の死傷者が出る事態やコレラのような感染症の大流行を想定した訓練が行われる。

フランスとの連携も始まっている。7月1日、フランス南部のトゥーロン軍港に中国海軍のミサイル駆逐艦「西安」が入港。5日間にわたり、フランス海軍との合同軍事訓練やバスケットボールの親善試合などで交流を深めた。

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の一環でアジアやアフリカ諸国に巨額のインフラ投資を行ってきたが、次の狙いである欧州への投資拡大でも徐々に成果を上げつつある。3月に欧州を歴訪した習近平(シー・チンピン)国家主席は、イタリアとの間で一帯一路への協力に関する覚書を締結。フランスからも巨額のビジネス契約を取り付けた。中国マネーの受け入れに批判的だったドイツのメルケル首相でさえ、習との会談後は、一帯一路において欧州が「積極的な役割を果たしたい」と述べた。

だが、中国の影響力増大がもたらすリスクへの懸念は大きい。なかでもアメリカは、欧州の対中貿易拡大に強く反対。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)など5G通信ネットワーク関連の中国企業の製品を採用する国とは、機密情報を共有しないと警告している。

アメリカが中国への対抗意識を燃やすのは経済面だけではない。米軍は中国が領有権を主張する南シナ海の海域で、定期的に駆逐艦を航行させる「航行の自由」作戦を展開。中国が6月末から7月初旬にかけて同海域で行ったミサイル発射実験についても、強い言葉で非難した。

これに対し、中国外務省の耿爽(コン・ショアン)報道官は7月3日にこう反論している。「南シナ海に空母を展開しているのはアメリカのほうだ。南シナ海を軍事化し、静寂を邪魔しているのが誰なのか国際社会は分かっている」

<2019年7月16日号掲載>

20190716issue_cover200.jpg
※7月16日号(7月9日発売)は、誰も知らない場所でひと味違う旅を楽しみたい――そんなあなたに贈る「とっておきの世界旅50選」特集。知られざるイタリアの名所から、エコで豪華なホテル、冒険の秘境旅、沈船ダイビング、NY書店めぐり、ゾウを愛でるツアー、おいしい市場マップまで。「外国人の東京パーフェクトガイド」も収録。

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国船、尖閣諸島海域を通過 海警局が発表

ワールド

インド中銀が輸出業者の救済策発表、米関税で打撃 返

ワールド

シカゴとポートランド派遣の州兵、一部撤退へ=米当局

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中