最新記事

日韓関係

日本と韓国の和解をアメリカが望む訳

The US Needs Japan-South Korea Reconciliation

2019年7月2日(火)15時45分
アンドルー・インジュ・パク、エリオット・シルバーバーグ

日米両政府の積極的なインフラ政策はエネルギー安全保障にとどまらない。今年2月には米エネルギー資源担当のフランシス・ファノン国務次官補がソウルと東京を訪問し、アジア・エッジやJUSEPのような成功を土台にさらなる前進への話し合いを行った。こうしたハイレベルの議論によって、多国間の経済規範を設定する道がさらに開かれるだろう。

地政学的な競争で決定的に重要な分野における協力体制を発展させるアプローチとして、アメリカは日米韓3国の財界の連携にも取り組んでいる。

5月に予定されていた日韓経済人会議は日韓関係の急速な悪化から延期になったが、こうした財界トップ会談への熱意は衰えていない。

またTPP(環太平洋経済連携協定)を離脱したとはいえ、アメリカはアジアにおける多国間の経済連携を支援する複数のプロジェクトに関与している。トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」に力を注ぎ、昨年7月にはワシントンでインド太平洋ビジネスフォーラムを立ち上げた。

海外インフラ投資の支援・強化を目指す18年のBUILD法や、アメリカのアジア経済政策に関する超党派的ビジョンを提示したアジア再保証推進法も、地域の途上国市場における貿易の円滑化および能力開発に対するアメリカ政府の持続的な熱意を裏書きしている。

一般市民の対話を促す

18年5月には日本の経団連の尽力によって、各国のトップ経済人が集まる第7回日中韓ビジネスサミットが開催された。同月、米商工会議所と経団連、韓国の全国経済人連合会は、新興市場での3国協調への幅広い民間部門の意欲を反映し、北朝鮮における将来の機会を検討するための会合を開いた。

韓国政府は途上国の経済開発に共同で取り組むこの構想に対する業界の関心に気付くのが遅かったが、米日韓の各政府が産業界のトップを集めて会議を組織すべき時期が来ている。

最後に、アメリカは日韓両国が歴史を克服する手助けをする必要がある。

これまで日韓両国の歴史認識の相違を乗り越える試みはほとんど成功していない。02年から専門家による共同研究が行われたが、両国の隔たりは今も解消できていない。若い世代の日本人は第二次大戦の教訓を忘れつつあり、過去を反省しようという機運は薄れている。

こうなれば政府に頼らず、民間主導の対話を続けていくことが、永続的な関係に必要な共通の歴史認識をつくり上げる唯一の方法かもしれない。

だからアメリカは政府レベルに限らず、あらゆる努力を後押しすべきだ。エリート層がいくら立派な勧告を出しても、それだけで長年にわたる不信感を覆すことはできまい。むしろ必要なのは、学者や教育者、学生、ジャーナリスト、ビジネスリーダーなど、両国からさまざまな一般市民を集めて率直な対話の場を設けることだ。

いくら共通する国益に集中したとしても、地政学的ないし経済的な国家戦略だけでは、日韓両国の間にくすぶる相互不信は解消できない。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年7月9日号掲載>

cover0709.jpg
※7月9日号(7月2日発売)は「CIAに学ぶビジネス交渉術」特集。CIA工作員の武器である人心掌握術を活用して仕事を成功させる7つの秘訣とは? 他に、国別ビジネス攻略ガイド、ビジネス交渉に使える英語表現事例集も。


ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続落、一時800円超安 選挙情勢の

ワールド

印リライアンス10-12月利益が予想届かず、コスト

ワールド

原油先物横ばい、イラン抗議デモ沈静化で供給懸念後退

ビジネス

消費減税、選択肢として排除されていない=木原官房長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中