最新記事

深海生物

水深450メートル、メカジキに群がるサメ、そのサメを食べる大魚

2019年7月18日(木)18時00分
松岡由希子

サメを食べるニシオオスズキ NOAA Office of Ocean Exploration and Research

<水深450メートルの海底で、メカジキの死骸を取り囲むサメの群れ、そのサメを食べるニシオオスズキの珍しい映像が偶然撮影された......>

水深およそ450メートルの海底で、サメの群れがメカジキの死骸を取り囲み、その皮や身を食べている珍しい光景がカメラでとらえられた。アメリカ海洋大気庁(NOAA)の調査船オケアノス・エクスプローラーの遠隔操作型無人潜水機(ROV)「ディープ・ディスカバラー(D2)」が偶然撮影したもので、2019年6月28日にアメリカ海洋大気庁の公式ブログで公開されている。

水深450メートルでサメの群れに遭遇

ディープ・ディスカバラー(D2)は、第二次世界大戦中の1943年7月に石油タンカー「ブラッディ・マーシュ号」が沈没したとみられる米サウスカロライナ州沖80マイル(約129キロメートル)の地点で、水中遺跡の探査にあたっていた。海底の岩やサンゴ、海綿、水生無脊椎動物、小魚などを観測している際、水深446メートルから454メートルの地点でサメの群れに遭遇。少なくとも11匹のサメが約2.5メートルのメカジキの死骸を取り囲み、餌食にしている様子をとらえた。

サメが短時間で胴体を噛み切って食したことから、このメカジキは死後数時間とみられる。死因は不明だが、釣り針の跡は見られないことから漁から逃れ、老衰、疾病もしくは何らかの損傷で死んだようだ。一連の現象は、メカジキやクジラなどの大型動物相が死ぬと、海底に沈んで、サメや魚類の餌となり、海底で生息する環状動物や甲殻類、微生物などのすみかとなる、いわゆる「フードフォールズ」とみられている。

sharks-hires1.jpg

(NOAA Office of Ocean Exploration and Research)

サメの群れは、2種類の深海ツノザメからなる。大きいツノザメはユメザメで、小さいほうのツノザメは、2018年に発見された新種「ジニーのツノザメ」だ。いずれも、水深213メートルから610メートルで生息している。

サメを食べ、間接的にメカジキを餌にするニシオオスズキ

メカジキの死骸に集まってきたのはこれらのサメだけではない。撮影された動画では、カニやウナギのほか、サメの群れのうちの一匹を丸呑みする大きなニシオオスズキが映っている。ニシオオスズキはメカジキを直接、餌にすることはできないようだが、サメを食べることで、間接的にこれを餌にしている。

(NOAA Office of Ocean Exploration and Research)

メカジキのような大型生物の「フードフォールズ」をいち早く感知し、その場所を特定することは、海洋生物が成長し、生き残っていくうえで不可欠だが、「どのようにこれを感知するのか」、「どれくらいの距離からこれを感知できるのか」など、そのメカニズムについては、まだ明らかになっていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米財務長官、強いドル政策支持再表明 FRBは国民の

ビジネス

米1月ISM非製造業指数、53.8と横ばい 投入コ

ワールド

米イラン、核協議の議題や開催地巡り溝 実現に不透明

ワールド

再送米政権、ミネソタ州派遣の移民職員700人削減へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 9
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中