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ノルウェー

世界初「時間のない世界」へようこそ、北極圏の島が名乗り

2019年6月25日(火)18時30分
松丸さとみ

69日間、太陽が昇ったままのノルウェー・ソマロイ Harald Groven- wikipedia

<夏には白夜が続くノルウェー北部の小さな島で、標準時のない「時間の概念がない場所」にしようという活動が始まっている>

旅行者も時計を外して訪れる島

北極圏に位置するノルウェー北部の小さな島、ノルウェー語で「夏の島」を意味するソマロイでは、夏は陽の沈まない白夜が、冬は夜の明けない極夜が続く。米CNNによると、ソマロイでは5月18日に夜が明けると、7月26日までの69日間、太陽は昇ったままとなる。夏至前後の今の時期は、白夜のピークと言える。夜中に家のペンキ塗りをしたり、芝を刈ったり、子どもたちはサッカーに興じたりして、思い思いに夏の夜を楽しんでいるという。

島民わずか300人強の小さなこの島では、「ソマロイを時間のない場所(タイムフリー・ゾーン)にしよう」という活動が展開されている。世界は通常、地域ごとに子午線で区切って標準時を設けているが、ソマロイをこの標準時のない「時間の概念がない場所」にしようとする活動だ。

地元住民のHvedingさんらはこのほど、約100人分の署名を集めた嘆願書をソマロイの町役場でノルウェー議会の議員に手渡した。認められれば、世界初のタイムフリー・ゾーンの誕生となる。この日、住民と議員は共に、ソマロイを公式にタイムフリー・ゾーンに設定するには実用的・法的にどのような障壁があるかを町役場で協議した。

ソマロイの主要産業は、漁業と観光業だ。観光地でよく目にするのは、恋人たちが永遠の愛を誓ってフェンスや手すりなどに南京錠をかける光景だが、この島は少し異なる。ソマロイへはノルウェー本土から橋を渡って行くのだが、この橋の欄干には、旅行者が島に入る際に時間を忘れようと腕時計を外してくくりつけて行くため、南京錠ではなく腕時計がたくさんはめられているという。

疲れたら寝てお腹が空いたらご飯、時間に縛られない生活

カナダのCBCラジオの番組「アズ・イット・ハプンズ」に出演したHvedingさんは、「昼夜の時間のうち70%は、時計なんて必要ないんだ、というのをもっと多くの人に理解してもらおうとしている」と活動の目的を語った。

欧州では、欧州議会が今年3月、夏時間(サマータイム)を廃止する法案を可決。2021年から廃止される可能性が高くなった。夏時間は、緯度の高い欧州地域などで、日の出から日の入りまでの時間が長くなる夏季に、時計の針を1時間早めて1日を有効に使おうと設定されているものだ。

しかしHvedingさんは、この「1日を有効に使うために時計の針を1時間動かす」か否かについて議会が話し合っていることについて、「北のこの地ではみんな笑っているよ。だって(時間なんて)関係ないもの」とCBCラジオの番組で述べた。「北極圏ではまったく違う暮らしをしているから」。夜中にカヤックをしたり、お隣さんとおしゃべりをしたりして、「疲れたら寝る」という生活らしい。

CBCラジオの司会者は、それでも観光客向けのホテルなどでは、朝食の時間を決める必要がありますよね、と疑問を口にした。しかしHvedingさんは、「朝食を食べに来られなかったらその食べ物は昼食に食べればいい。ホテルは柔軟に対応するよ」と話し、「普段は決まった時間に食事をしているかもしれないが、この島ではお腹が空いたときに食べてほしい」と加えた。

電車や飛行機については、Hvedingさんはカナダの日刊紙ナショナル・ポストに対し、タイムフリー・ゾーンになってもやはり時刻表が必要であることは理解している、と説明した。しかしそんなことよりも、スケジュールに振り回されることの方が心配だと話し、時間のある世界で暮らす私たち全員に向けたものと思われるこんなメッセージを同紙に述べた。「1日の仕事が終わったら、お願いだから腕時計を外してほしい。時計に振り回されないで」。

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