最新記事

中朝会談

うろたえる韓国、北朝鮮の非核化交渉で脇役に

Sidelined by China

2019年6月24日(月)15時15分
テジョン・カン

習近平が国賓として北朝鮮を訪れ、友好ムードに包まれた中朝 KCNA-REUTERS

<金正恩は習近平にトランプへの伝言を託し、安倍にも相手にされない文在寅は出番を失う>

国賓として北朝鮮を訪れた中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の盛大な「おもてなし」を受けた。中国の国家主席の訪朝は14年ぶり。2日間の日程で両国の強固な絆をアピールすると、習は6月21日、専用機で北朝鮮の首都・平壌を後にした。

習の初訪朝は、アメリカと中国の貿易戦争がエスカレートし、米中の緊張が高まるなかで行われた。そのため中朝それぞれの会談に向けた思惑やその成果、両国の今後の動きに国際社会の関心が集まっている。

そうしたなか、習の訪朝にうろたえているように見えるプレーヤーがいる。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領だ。

北朝鮮の非核化交渉で中国が果たす役割が拡大し、韓国が米朝の「仲介」役を果たす余地が減るのではないか──韓国国内ではそんな懸念が高まっている。

mag190624kreachina-2.jpg

韓国の文大統領は置き去りにされている ALAIN JOCARD-POOL-REUTERS

韓国のメディアは習の訪朝を前に、文は中朝会談を注意深く見守るつもりで、朝鮮半島の非核化に向けた交渉の手詰まりを打開するためさまざまなアイデアを練っていると報じていた。

習の訪朝で、朝鮮半島の核問題解決のための枠組みが変わったとの見方もある。言い換えれば、この問題に関わるプレーヤーの数がアメリカ、北朝鮮、韓国の3者から、中国を含めた4者になった、ということだ。

韓国の丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一相もそうした見方をしている。6月20日に韓国の国会議員らが主催する討論会で、これからは中国を考慮に入れる必要があると述べた。韓国は非核化交渉の新たな枠組みに備え、戦略の練り直しを迫られている、というのだ。

しかし、韓国政府の見方はそれとは少し異なるようだ。青瓦台(大統領府)は同日、頓挫した米朝交渉の再開は当事者である両国が解決すべき事柄だという見解を発表した。

青瓦台の高旼廷(コ・ミンチョン)報道官は、習の訪朝で非核化プロセスにおける韓国の役割が減るのではないかという記者の質問に回答。韓国はメディアが述べているような仲介役にはとどまらず、朝鮮半島の非核化と平和を実現する最速の方法を探る立場にあると力説した。

G20でも蚊帳の外に?

高はまた、米韓首脳会談も近々行われる予定なので、それも含めた全体的な状況で判断するよう報道陣に求めた。

ドナルド・トランプ米大統領は大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の前に韓国に立ち寄り、文と会談することになっている。文はその前にもう一度金委員長と会っておきたいと考えていたが、韓国の会談呼び掛けに対し、北朝鮮側は何の反応もしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

全米の大学でイスラエルへの抗議活動拡大、学生数百人

ワールド

ハマス、拠点のカタール離れると思わず=トルコ大統領

ワールド

ベーカー・ヒューズ、第1四半期利益が予想上回る 海

ビジネス

海外勢の新興国証券投資、3月は327億ドルの買い越
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中