最新記事

イタリア

アマンダ・ノックス、それでも消えない「集団セックス殺人魔」の汚名

Amanda Knox 'Traumatized' By Media Coverage As She Returns To Italy

2019年6月18日(火)14時30分
サラ・ガイ

裁判以来初めてイタリアに戻り、自分への不当な仕打ち訴えるアマンダ・ノックス Guglielmo Mangiapane-REUTERS

<2011年の釈放以来初めて、「あの事件」の舞台であるイタリアを訪ねたアマンダ・ノックスを待っていたのは、容赦ないマスコミと人々の冷たい目だった>

2009年イタリアで、イギリス人留学生メレディス・カーチャー(当時21)が集団セックスを強要された上、惨殺された。容疑者として捕まったのが、カーチャーのルームメイトでアメリカ人のアマンダ・ノックス(当時20)。セックス殺人魔との疑惑の目を向けられた起訴された冷たい美貌のノックスの去就に、世界中がクギ付けになった。

2011年に無罪が確定し、アメリカに帰っていたノックスが6月13日、釈放以来はじめて、イタリアに戻った。だが複数の報道によれば、彼女のイタリア再訪は順調とは言えないようだ。

ネットフリックスのドキュメンタリー『アマンダ・ノックス』


ノックスがわざわざイタリアを訪れたのは、冤罪の防止に取り組んでいる非営利組織「イノセンス・プロジェクト」が主催する刑事司法に関する会議に出席するためだった。だがノックスを待っていたのは、血に飢えたメディア。イベントの主催者の一人がNBCニュースに語ったところによれば、14日の会議に現れた彼女はメディアのせいで「心に傷を負って」会場を去ったという。


<関連記事>集団セックス殺人、無罪確定の理由
<関連記事>集団セックス殺人の「推定有罪」


ノックスは6月に入ってからメディア向けに次のような文章を発表していた。「自分が犯していない殺人の罪に問われ、裁判にかけられていた間、検察側は私をセックス狂いの魔性の女に仕立て上げ、メディアは長年、既に十分センセーショナルでひどく不当なストーリーをさらにセンセーショナルに取り上げることによって利益を得てきた」

CBSニュースによれば、イノセンス・プロジェクト(フロリダ支部)のセス・ミラー事務局長はかつて、ノックスが再びイタリアを訪れることに関する議論の中で、イタリア再訪は「里帰りか、召集か、あるいは狂騒」のいずれかになるだろうと予想していた。

被害者の遺族が反発

2009年に懲役26年の実刑判決を受けた後も、ノックスは一貫して無罪を主張して闘い続けた。イタリアの刑務所に4年間服役した後、2015年に最高裁で無罪が確定した。それでも今回、彼女がイタリアに到着した後、カーチャーの遺族を代表する弁護士は、彼女のイタリア訪問は「不適切」だと非難。さらに「刑事司法に関する専門家討論会に彼女を招くこと自体が誤りだ」と主張した。

31歳になったノックスはこれまでも、自分の汚れたイメージを変えるためにさまざまな活動を行ってきた。2013年には、イタリアの刑事裁判制度の中で体験したことを詳細に記した回顧録『Waiting to be Heard(私の言い分を聞いてもらえる日を待っている)』を出版。ネットフリックスのドキュメンタリー『アマンダ・ノックス』に出演したり、『真の犯罪についての真実』というポッドキャストの番組でホストを務めたり、彼女に対するメディアの仕打ちを検証するシリーズ番組『スカーレットレター・リポート』ではリポーターを務めた。

6月15日、イタリアのモデナで刑法の専門家会議に出席したノックス。流暢なイタリア語で話している


ノックスは15日の会議に登壇。自分が受けた有罪判決は不当なものだったとして、当時を振り返りながら涙ながらに訴えた。

(翻訳:森美歩)

magSR190625issue-cover200.jpg
※6月25日号(6月18日発売)は「弾圧中国の限界」特集。ウイグルから香港、そして台湾へ――。強権政治を拡大し続ける共産党の落とし穴とは何か。香港デモと中国の限界に迫る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金融政策巡る次期FRB議長の訴追は「大統領次第」=

ワールド

ロシアとウクライナ、捕虜交換で合意 三者協議2日目

ワールド

米ロ、新START当面順守で合意間近と報道 ロ報道

ワールド

米公務員制度、1世紀ぶり大改革 大統領が5万人の人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 6
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 7
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 8
    関税を振り回すトランプのオウンゴール...インドとEU…
  • 9
    習近平の軍幹部めった斬りがもたらすこと
  • 10
    日本経済低迷の主因である「空洞化」をなぜ総選挙で…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    日本はすでに世界有数の移民受け入れ国...実は開放的…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中