最新記事

米外交

対イラン「圧力路線」の放棄で、米外交の迷走が浮き彫りに

2019年6月11日(火)16時20分
フレッド・カプラン

トランプ(左端)の意向を忠実に代弁しようとしてきたポンペオ(右隣)だが LEAH MILLISーREUTERS

<「前提条件を付けない」話し合いに突如転換──イランとの対話自体は好ましいことだが......>

ポンペオ米国務長官がイランに対する姿勢を突如一変させた。6月2日、トランプ政権が「前提条件を付けずに」イラン政府と話し合う用意があると表明したのである。

これまでポンペオは、米政府がイランと話し合いのテーブルに着く前提として12の条件を突き付けていた。全てイラン側に大幅な譲歩を強いるもので、実質的に主権の放棄を求めるものまで含まれていた。要するに、イランと話し合うつもりなどないと言っているに等しかった。

ポンペオの方針転換は、ある面では歓迎すべきことだ。イランが15年の核合意を遵守している以上、アメリカが前提条件なしの話し合いに応じない理由はない。しかし、ポンペオの豹変はトランプ外交の迷走ぶりも改めて浮き彫りにした。

トランプがイラン核合意からの離脱を表明したのは、昨年5月。イランに対する経済制裁も再開した。さらに、ほかの国がイランと取引を続ければ制裁の対象にするという脅しまでかけた。トランプはこれを「最大限の圧力」と呼んだ。

イランへの圧力路線が有効な政策だったかは怪しい。圧力が強まれば、イラン国民の現体制への支持は強まる。しかも、たとえ現体制が崩壊しても、新たに権力を握るのは保守強硬派か軍部の可能性が高い。

圧力が通用しなくなる?

それに、「最大限の圧力」は、対北朝鮮政策で好ましい結果を生まなかった。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を話し合いのテーブルに引き出すことには成功したが、金は何の譲歩もしなかった。

いずれにせよ、今回のポンペオの豹変により、トランプ政権の「最大限の圧力」が一時的なはったりにすぎないことが露呈した。イランに限らず、今後この圧力路線の標的になる国は、しばらく待てば、しびれを切らしたトランプが折れてくると計算できるようになった。

対イラン政策の軟化は、5月に入ってから始まった。このままでは戦争になりかねないと、トランプは突然気付いたらしい。自分に電話するようイラン指導部に呼び掛けてもいる。

ポンペオはこの2年半、最初はCIA長官として、その後は国務長官として、トランプの意向に忠実な発言をするよう努めてきた。1年前にトランプがイランとの対話ではなく体制変革を望んでいるように見えたときは、12項目の厳しい前提条件を突き付けた。そして今回、トランプが話し合いを望む意向を明らかにすると、ポンペオも主張を変えたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 7
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園…
  • 8
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中