最新記事

中東

米イラン戦争を回避する方法はある

How to Prevent an Accidental War With Iran

2019年6月1日(土)14時00分
スティーブン・サイモン(アマースト大学教授・元米国家安全保障会議シニアディレクター)、リチャード・ソコルスキー(カーネギー国際平和財団シニアフェロー)

イランは5月8日、核合意内容の履行の一部停止を発表。10日に首都テヘランでは政府の決定を支持する市民が気勢を上げた FATEMEH BAHRAMIーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<主戦派と慎重派の対立で揺れるトランプ――偶発的な軍事衝突を避ける方法はある>

ホワイトハウスはいつものように否定しているが、対イラク政策の目的と、軍事的脅威あるいは武力行使の果たすべき役割に関して、トランプ米政権内の対立が明らかになってきた。

主戦論派はイランと戦争がしたくてうずうずしている。相手をけしかけて、軍事攻撃の口実になりそうな行動を取らせようとしているようだ。

ドナルド・トランプ大統領はイランを交渉の席に連れ戻して、より良い核合意のディール(取引)をまとめたいと繰り返している。地域におけるイランの振る舞いと弾道ミサイル開発について、譲歩を勝ち取ろうというわけだ。一方で慎重論派は、戦争に向かいつつあることを憂慮している。中東への米軍の増派を正当化できるかどうかにも、懐疑的だ。

米政権の真の狙いが何であれ、主戦論者と戦争回避論者が合意できるはずのことが1つある。イランとの偶発的な、あるいは意図しない武力衝突は、避けなければならないということだ。

今のところ米政権の行動は、計算違いや誤解、意思の疎通の問題から戦争になだれ込むリスクを、むしろ高めている。イランとアメリカの間に直接かつ頻繁に接触できる交渉ルートがなく、事が起きたときに拡大を防ぐ仕組みがないため、かなり危険な状況だ。

確かにトランプはイランとの戦争に乗り気ではなさそうだ。ただし、選択肢から完全に消えたわけではない。何しろトランプは気まぐれさで悪名高い。しかも、省庁間の意思決定プロセスは完全に破綻しており、さまざまな選択肢や見解が大統領まで届かない。そしてサウジアラビアは、トランプをそそのかしてイランをピンポイントで攻撃させたいようだ。

官僚的な技にたけた武闘派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、注意散漫で知識も情報も乏しいトランプを口説き落とすことは十分にあり得る。イランに対して限定的な軍事作戦を行えば、コストもリスクもほとんどないか、一切なしでアメリカの目的を達成することは可能だと、大統領を納得させるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヘグセス長官の民間アプリ使用は問題、「米軍危険に」

ワールド

EU、レアアース不足対策などで経済安保ドクトリン策

ワールド

中国外相、対日姿勢で仏に支持要請 台湾巡り

ワールド

米地区連銀総裁、最低3年地元居住を選任要件に=ベセ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中