最新記事

疑似考古学

「古代マヤの宇宙飛行士」説、アメリカで再浮上?

2019年5月14日(火)16時40分
秋山文野

パカル王の石棺の浮き彫り ここでは、あえて横向きに表示 wikipedia

<マヤの石棺に宇宙飛行士の姿が描かれている......こんなニセ科学が再び話題になったが、そうした説を信じる人はトランプ政権以降ますます増えている、という......>

人気ポッドキャスト番組『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』の司会者が今年2月、「古代マヤの文明は宇宙から来た人々が築いたもので、7世紀マヤの国王パカル一世の棺には宇宙船に乗る宇宙飛行士の姿が描かれている」という説を紹介し、「主流の考古学者はどう考えているのか」と問いかけた。それに対し、Twitterで本職の考古学者から回答があり、それを科学誌Scienceが4月12日号でコラムにしている。




「あなたが番組で言及したのはパレンケのパカル王の棺の蓋に描かれたものですね。これは、王が亡くなったそのとき、地下世界へと落ちていく様子を表しています。

この彫刻がまさに死者の亡骸の上で見つかったという事実を踏まえると、死と次なる世界へ移行という概念が強く裏付けられます。(ヒスイの素晴らしい埋葬マスクもです)。

『望遠鏡』なのではないかと番組で言われていたのは、実際には今日『世界樹』として知られているイメージです。 (一番上の鳥に注目して、望遠鏡説や宇宙船の打ち上げ説と比較してみましょう)。

世界樹の図は古代マヤの意匠としてごく一般的です。もう一度、鳥と特に樹の根元の部分をよく確認してみて下さい。パカル王の石棺の蓋に見られる図柄と顕著な類似点があることが見て取れます。

これはフォン・デニケンや他の#AncientAliens (古代宇宙人)説を唱える人たちによくある手法ですが、あるイメージを創造した文化にとってはごく普通の図柄を取り上げて、元の文脈からかけ離れたものにした上で、ひねった、現代と同じようなものの見方をさせようとします。〜中略〜

フォン・デニケンの主張は、人類だけではあのような都市、文明を築き得なかったと主張するもので、人類の成し遂げたことを悲しいほど貶めています。『古代の宇宙人』は、マンガの中だけの存在にしておきましょう」

考古学者のデイビッド・アンダーソン教授はこのように回答し、マヤ文明に宇宙人が関わっていたとする説を一蹴した。

ツイートで挙げられている「フォン・デニケンや他の#AncientAliens (古代宇宙人)説」とは、1968年に作家のエーリッヒ・フォン・デニケンが著書『未来の記憶』などで広めた「パレンケの石棺に描かれた古代の宇宙飛行士」といった説を差す。古代の文明に当時の技術では考えられないような高度な事物が存在し、地球外から高度な文明を持つ宇宙人がそうした技術を持ち込んだ、という考え方を示唆している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、EU産ブランデーに最大34.9%の関税 5日

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

オランダ国防相「ロシアが化学兵器の使用強化」、追加

ビジネス

GPIF、24年度運用収益1.7兆円 5年連続増も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中