最新記事

日本企業

日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に支払われている

2019年5月22日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

今後の日本では、雇用の流動性は高まっていくだろう。だが海外では、それがスタンダードだ。45~54歳男性に今の勤め先で働き始めた年齢を問うと、アメリカでは半分以上が「40歳以降」と答えている(OECD「PIACC 2012」)。

雇用の流動性がもっと高い国もある。「40歳以降」という回答比率が高い順に、OECD加盟の25カ国を並べると<図1>のようになる。

mai190522-chart02.jpg

アラフィフ男性に今の会社で働き始めた年齢を尋ねた結果だが、国によって大きく異なっている。ニュージーランド、エストニア、デンマークでは6割が「40歳以上」と回答している。今の会社の在籍期間がほんの数年という人たちだ。組織を移った回数は5回、10回というのがザラだろう。

アメリカは中間くらいで、日本は最下位に位置している。アラフィフ男性の6割が、20代(新卒)で入った会社に勤め続けている。今から7年前のデータだが、雇用の流動性が最も低い社会だ。

諸外国では、「高い給与が得られる」「自分の専門性が活かせる」という理由で、労働者は職場を頻繁に移る。しかし日本では長く勤めるのがよしとされ、転々と色々な所を渡り歩く人は「耐性がない」と低く見られる。転職(場)がキャリアップにはならない社会だ。

雇用の流動性が高まるのは悪いことではない。日本固有の職域の病理(パワハラ、転勤強制等)を改善させるきっかけにもなるだろう。一つの組織にずっと「しがみつく」生き方はリスクが高い。

しかし、不当解雇がまかり通ることになってはならない。企業は利益追求と同時に、社員の生活保障の機能が期待される。有能な人材を獲得する上でも、企業にはよりいっそう「社会性」が求められるようになる。

<資料:総務省『就業構造基本調査』2017年
    OECD「PIACC 2012」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中