最新記事

ウクライナ大統領選

ロシアのどす黒い影がウクライナのコメディアン大統領を脅かす

2019年4月24日(水)13時30分
クリスティナ・マザ

国民の期待を一身に集めるゼレンスキーだが政治家としての実力は未知数だ VALENTYN OGIRENKOーREUTERS

<決選投票直前に最有力候補のメールが流出――ロシアとの関係を示唆する内容は罠か真実か>

コメディアンで俳優で政治経験ゼロ。それでもここ数カ月、ウォロディミル・ゼレンスキーがウクライナ大統領選で先頭を走ってこられたのは、有権者が汚職まみれの既存の政治家に辟易していたからだ。

ところが21日の決選投票を前に、ゼレンスキーも清新とは言い難いことを示唆する情報が国内のマスコミをにぎわせた。

きっかけは、ウクライナのNGOミロトボレッツ・センターが入手・公表したゼレンスキーに関する大量のメールだ。それらは、ウクライナ東部で分離独立を目指す親ロシアの「ドネツク人民共和国」指導部とつながりのあるロシア治安部門高官が、ゼレンスキー陣営に資金提供をしようとしたことを示唆していた。ドネツク人民共和国は14年のウクライナ騒乱以降、親ロシア派武装勢力が独立を宣言し、実効支配している。「例のコメディアンのアクションのための予算が承認された」と書かれているメールもあった。

資金の一部が、ロシアの対ウクライナ政策の黒幕とされるウラジスラフ・スルコフ大統領補佐官と富豪コンスタンチン・マロフェーエフから流れていることを示すメールもあった。

「スルコフはクリミア併合を考案した1人だ」と、ロシアとウクライナ研究者のオルガ・ロートマンは指摘する。「マロフェーエフはクリミア併合を資金的に援助して、米オバマ政権の制裁対象になった。彼は親ロシア派武装勢力とロシア政府の仲介者でもある」

ロンドンに拠点を置く調査報道サイト「ザ・インサイダー」や、ウクライナの英字オンライン紙「ユーロマイダン・プレス」は、これらのメールは本物との見方を示している。

それでも揺るがぬ人気

その一方で、ミロトボレッツ・センターが流す情報には注意が必要だと、米ウッドロー・ウィルソン国際研究センターのロシア研究者ニーナ・ヤンコービッチは語る。同センターはNGOと称するが、ウクライナの政府機関との関係が深いことで知られる。「彼らの評判は芳しくない。やることに見境がなく、政治的動機が強い」

つまりこれらのメールは、ゼレンスキーが実際にロシアとつながっていることを示唆している可能性がある一方で、ハッキングされることを知りながらロシア(またはドネツク人民共和国)がゼレンスキーに送り付けて、彼の信用を落とそうとした可能性がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が短期間閉鎖へ、予算案の下院採決持

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 

ビジネス

アングル:機内WiFiは必需品か、マスク氏とライア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中