最新記事

報道の自由

報道の自由度ランキング、アメリカが3年連続下落 暴力的風潮に危機感(国境なき記者団)

U.S. Press Freedom Ranked "Problematic" For First Time

2019年4月19日(金)18時30分
ダニエル・モリッツラブソン

米キャピタル・ガゼット紙に侵入した銃乱射犯に殺された5人のジャーナリストを追悼するロウソク(2018年6月29日)  Leah Millis- REUTERS

<「ジャーナリストに対する敵対的な風潮が増し、『著しい恐怖を覚える状況』も現出している」と指摘>

国境なき記者団(RSF)が4月18日、2019年版「世界報道の自由度ランキング」報告書を発表した。今回の報告書では、アメリカにおける報道の自由のレベルが初めて「問題あり」に格下げとなり、ランキングでも48位に順位を落とした。

RSFでは、アメリカの評価が下がった要因について、「ドナルド・トランプ大統領の(フェイクニュースといった)コメントだけにとどまらない(ジャーナリストに対する)敵対的な風潮が増している」点を指摘した。さらにRSFは、世界のジャーナリストたちの間で広がる「著しい恐怖を覚える状況」についても、具体例を挙げて記述している。

ランキング上位は、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンだった。一方、著しく順位を落とした国としては、ニカラグア(24ランクダウン)、タンザニア(同25)、中央アフリカ共和国(同33)がワースト3に挙げられている。マレーシア、モルディブ、チュニジアは、大幅なランクアップを果たした。

新聞社で銃乱射、5人死亡

この報告書は、180の国や地域を対象に、ジャーナリストに与えられている自由をランキングしたものだ。今回の報告書では、「アメリカとカナダにおける報道機関への組織的な攻撃」に警告を発し、特にトランプのメディアに対する批判的な言動に注意を促した。ジャーナリストへの攻撃の例としては、2018年6月の「キャピタル・ガゼット」紙銃撃事件や、同年10月のシーザー・セイアクによる脅迫事件を挙げている。

キャピタル・ガゼット紙の事件では、メリーランド州アナポリスにある同紙編集部に銃を持った男が押し入り、スタッフ5人を殺害した。また、セイアクはパイプ爆弾などの爆発物16個を、民主党の有力議員やCNNの事務所に送りつけたとして逮捕されている。さらに2019年2月、海兵隊出身の沿岸警備隊大尉がジャーナリストやリベラル派の政治家を標的にした襲撃を企て、大量の武器を蓄えていたとして逮捕された事件についても触れている。

報告書では、トランプ政権のジャーナリストに対するさまざまな妨害行為も取り上げている。これには、CNNのジム・アコスタ記者が一時、記者証を取り上げられた件や、CNNのケイトリン・コリンズ記者が記者会見から閉め出された件などが含まれる。ほかにも、アメリカとメキシコの国境で取材するジャーナリストの電子機器が検査された事例や、経営難に直面する報道界の現状にも言及した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 7棟の捜

ワールド

プーチン氏、一部の米提案は受け入れ 協議継続意向=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中