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揺らぐ「平等の国」スウェーデン 富裕層減税で格差拡大、ポピュリズムや極右台頭の懸念

2019年4月14日(日)12時45分

平等な社会だと世界的に定評のあるスウェーデンだが、社会民主労働党率いる政府が導入する高所得者層向けの減税策により、富裕層と貧困層の格差が拡大することになる。写真は同国の国旗。首都ストックホルムで2017年5月撮影(2019年 ロイター/Ints Kalnins)

平等な社会だと世界的に定評のあるスウェーデンだが、社会民主労働党率いる政府が導入する高所得者層向けの減税策により、富裕層と貧困層の格差が拡大することになる。

概要が10日発表された今回の減税策は、昨年9月の総選挙によってどの政党も過半数を握れない「ハングパーラメント(宙吊り議会)」に陥った中道左派と中道右派が政党間で合意した妥協策の一環だ。反移民を掲げる極右スウェーデン民主党を政権から排除する狙いがある。

これは、ドイツやデンマークといった欧州諸国の政治家が直面しているジレンマを映す鏡とも言える。こうした国々の主要政党は、左派と右派の対立を隠すか、あるいはポピュリスト(大衆主義)政党に権力の一端を担わせるかの選択を迫られている。

だが、多くのスウェーデン国民は治安や教育、高齢者介護などの公共サービスに不満を募らせており、富裕層への減税により、格差の拡大に根ざしているとみられる外国人嫌いや大衆主義的な感情がさらに悪化する恐れがある、とアナリストは警鐘を鳴らしている。

今回の減税策では、70万スウェーデンクローナ(約840万円)を超える年間所得者に上乗せされていた5%の税金が廃止される。この追加課税は1990年代初頭の経済危機時に財政支援のため導入されたものだ。

スウェーデンの高所得層に対する課税率は約60%と依然、他の多くの国と比べて群を抜いて高いとはいえ、来年実施される減税措置により、同国社会における「持てる者」と「持てざる者」の格差が拡大する可能性が高い。同国は近年、富裕税廃止を含めた高所得者層を利する一連の政策を打ち出してきた。

世界的に最も平等な社会を擁するスウェーデンだが、経済協力開発機構(OECD)によれば、他の先進諸国よりも速いペースで貧富の格差が拡大している。社会全体に所得がいかに平等に分配されているかを計測するため、OECDは「ジニ係数」を使用している。

2019年予算で導入された富裕層への減税や他の広範囲な所得減税による200億クローナの減収は、高齢者介護や海外援助向け予算の削減、環境税の引き上げによって一部相殺されることになる。

こうした措置について、福祉大国スウェーデンを築き上げ、平等と公平さの基準とみなされている社会をつくった党の価値観に対する裏切りだと、中道左派の政権与党・社会民主労働党の一部議員は反発している。

「それは民主主義を守ることであり、われわれの党にとっては、1人も見捨てられることのない福祉国家を守ることだ」と、同党のマーカス・カリファテイデス議員は言う。「スウェーデンはもはや、そのような社会ではない」

だが他の多くの人にとって、反移民のスウェーデン民主党を排除することはその代償を払うに値する。

「高所得層への減税が、格差を和らげるわけではない」とマグダレナ・アンダーソン財務相は3月29日、ロイターに語った。「社会民主労働党の優先事項でないことは確かだが、議会で過半数を得る必要があり、妥協せざるを得ない」

昨年9月の総選挙では、社会民主労働党は過去1世紀以上で最悪の大敗を喫する一方、亡命希望者に門戸を閉ざす政策を掲げる、欧州連合(EU)懐疑派のナショナリスト政党、スウェーデン民主党は議席数を伸ばし第3党に躍進した。

こうした事態を打開するため、社会民主労働党と緑の党は、協力と引き換えに所得減税や、賃貸住宅・労働市場の自由化を求める中道・右派の各政党と、4年間にわたる73項目から成るプログラムで合意した。

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