最新記事

ブレグジット

強行離脱か穏健な道を探るか 決断迫られる英国メイ首相

2019年4月1日(月)10時43分

メイ英首相(写真中央)が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案が英議会で三たび否決されたことを受け、首相は合意のないまま離脱するか、一段と穏健な離脱を交渉するか、総選挙の前倒し実施を決断するか迫られている。英議会で29日撮影。英議会提供(2019年 ロイター)

メイ英首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案が英議会で三たび否決されたことを受け、首相は合意のないまま離脱するか、一段と穏健な離脱を交渉するか、総選挙の前倒し実施を決断するか迫られている。

メイ首相は自身の離脱案が可決されれば辞任する意向を表明していたが、反対派を翻意させることはできなかった。これを受けて離脱がいつどのような形で実現するのかだけでなく、実際に離脱するのかを含め一段と混迷が深まった。

英議会は1日、EU離脱に関し過半数の支持が得られる代替案を模索するための投票を再び実施する。メイ首相はその後、早ければ2日に自身の離脱案を再び採決にかける可能性がある。

ガーク司法相はBBCテレビに対し「現在は理想的な選択肢がなく、想定されるいかなる結果についても説得力ある反対論がある。それでもわれわれは何かをしなくてはならない」と強調。

「首相は残された選択肢を検討しており、何が起こり得るか考えているが、何らかの決定が下されたとは私は思わない」と述べた。

ただ、メイ氏の与党・保守党内では早急な決断を求める声が高まった。英大衆紙サンによると、同党の議員314人のうち170人はメイ氏に書簡を送り、合意の有無にかかわらず数カ月内にブレグジット(EU離脱)を実施するよう求めたという。

EU首脳は今月、メイ英首相がEUと合意した離脱協定案が英議会で承認されない場合、離脱日を3月29日から4月12日まで2週間延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めている。

先行きは依然不透明

ロンドンでは前週、ブレグジット支持者とEU残留派の両方がデモを行っており、世論は引き続き分断されている。両派とも多くの国民は政治のリーダーシップが欠如しているとの不満を抱いている。

議会は1日1900GMT(日本時間2日午前4時)、議員らがこれまで提示した9つの離脱代替案から下院のバーコウ議長が選んだ案について投票を実施する。これには合意なき離脱や合意なき離脱の阻止、EUとの関税同盟の維持、2度目の国民投票の実施といった案が含まれている。

ガーク司法相は「議会の意向を非常に慎重に考慮に入れる必要があるのは明白だ」と述べた。

これまでのところ下院で過半数を得た代替案はないため、総選挙の前倒し実施に関する観測も浮上。ただ、どのような結果に結び付くかは予測不可能で、保守党を誰が率いることになるのかも不明。

保守党のジェームズ・クレバリー副幹事長は総選挙実施の計画はないと述べた。一方、最大野党・労働党のトム・ワトソン副党首は同党は選挙への準備があると語った。

労働党影の外相のエミリー・ソーンベリー氏はメイ内閣の不信任投票を求める動議を提出する可能性があると述べた。「メイ氏が首相の座にとどまるのか、誰かに交代するのか、次の首相は誰になるのか全く分からない。混乱状態だ」と嘆いた。

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長

ワールド

米下院特別委、ロ軍への中国人兵参加問題で国務省に説

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

SHEIN、米事業再編を検討 関税免除措置停止で=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中