最新記事

恒星間天体

5年前、太陽系外の恒星間天体が地球に衝突していた

2019年4月22日(月)18時45分
松岡由希子

dottedhippo-iStock

<「オウムアムア」の飛来に先立ち、2014年1月にも、恒星間天体が地球にたどり着いていた可能性があることがわかった>

2017年10月、米ハワイ州マウイ島のハレアカラ天文台で、ハワイ大学のパンスターズ1望遠鏡が太陽系外から飛来した恒星間天体をとらえた。直径400メートル程度の大きさで高速移動するこの物体は「オウムアムア」と名付けられ、天体観測史上初の恒星間天体とされてきたが、「オウムアムア」の飛来に先立ち、2014年1月にも、恒星間天体が地球にたどり着いていた可能性があることがわかった。

小惑星のかけらなどが大気圏に到達して爆発し、閃光を放つ現象を「火球」という。その主なものは米国政府のセンサーで測定されており、位置情報や速度などの測定データはアメリカ航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)の地球近傍天体研究センター(CNEOS)で保管されている。

2014年1月の流星が極めて速いスピードだった

米ハーバード大学のアビ・ローブ教授を中心とする研究チームは「『オウムアムア』よりも小さな恒星間天体はもっと多く存在し、その一部が頻繁に地球に衝突しているのではないか」との仮説のもと、地球近傍天体研究センター(CNEOS)が保有する過去30年分のデータを解析

2014年1月8日午後5時頃にパプアニューギニアのマヌス島近くで観測された長さ45センチ未満の流星が極めて速いスピードであったことがわかった。この流星の速度は太陽を通過した時点で毎秒約60キロメートルと超高速で、速度データから流星の軌道を計算したところ、その軌道は太陽と結びついていなかった。

その突出した速度から、この流星は、太陽系外の、惑星系の深部もしくは厚い銀河円盤の星からやってきた可能性があるという。一連の解析結果をまとめた研究論文は現在査読中で、これを通過すれば、学術雑誌「アストロフィジカルジャーナル・レター」に掲載される見通しだ。

「人類が二番目に発見した太陽系外の天体」

研究論文の筆頭著者である天文学者のアミル・スィラージ氏は、本誌米国版において「この流星は、人類が二番目に発見した太陽系外の天体であり、地球に衝突したものとして初めての天体だ」と主張。米アリゾナ大学のキャット・ボルク博士も、米誌「ナショナルジオグラフィック」の取材に対し、「この超高速の流星が恒星間天体からやってきたと結論づけるのは妥当だと思う」との見解を示している。

一方、ジェット推進研究所のエリック・ママジェク博士は、科学メディア「サイエンスニュース」の取材において「この研究結果は興味深いが、一つの事象の測定データに基づくものにすぎない」と述べ、さらなる検証の必要性を示唆している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった...「ジャンクフードは食べてもよい」
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中