最新記事

スーダン

スーダンでクーデター、軍がバシル大統領を拘束 2年間の移行政権運営後、選挙実施と発表

2019年4月12日(金)11時00分

スーダンで30年におよぶ強権支配を敷いたバシル大統領(75)が、軍部のクーデターで失脚した。4月1日撮影(2019年 ロイター/Mohamed Nureldin Abdallah)

スーダンで30年におよぶ強権支配を敷いたバシル大統領(75)が11日、軍部のクーデターで失脚した。バシル氏の解任と拘束を発表したイブンオウフ国防相は、軍主導で2年間の移行政権を運営後、大統領選挙を実施すると明らかにした。

バシル氏は約4カ月間にわたり大規模な反政府デモに直面してきた。デモ隊は同氏の退陣に歓喜の声を上げたが、軍を率いる国防相の発表を受け、政治の主導権を市民に明け渡すよう軍指導部に求めるため、抗議活動を継続している。

イブンオウフ国防相は国営テレビで、バシル氏は「安全な場所」で拘束されており、軍事評議会が今後は政権を運営すると述べた。

国営テレビがその後報じたところによると、イブンオウフ氏が同評議会のトップとなる。

金張りの肘掛け椅子に座った同氏は、国家非常事態と国内全域での停戦、憲法の停止を宣言するとともに、空港を24時間封鎖し、国境の通過所も追って通知があるまで閉鎖すると表明した。

反政府デモを主催してきたスーダン専門職組合(SPA)は国防相の政権移行計画を受け入れない立場を示し、デモ隊に国防省前の座り込みを続けるよう呼び掛けた。その後すぐにデモ隊は首都ハルツームの中心部を埋め尽くした。

スーダンの情報筋によると、バシル氏は大統領公邸で「厳重な監視」下にあるという。

国営テレビによると、午後10時から午前4時までの夜間外出禁止令も発令される。

ただ、発令後も数千人規模のデモ隊は国防省前やハルツームのその他の場所で抗議活動を継続、「盗人を解任して盗人に引き継がせた」、「革命だ!革命だ!」などど気勢を上げた。

SPAは、文民主導の移行政権に権限が移譲されるまでは座り込みを続けると説明。幹部は、軍部と権力移譲について交渉する見通しだと述べた。

米政府はスーダンとの関係正常化交渉を停止すると表明。国務省は一部の駐在員をスーダンから退避させ、米国民に渡航に関する警告を発した。

国務省は政権移行をクーデターとは認定していないが、平和的で民主的なスーダンを支持し、2年を待たずに市民が求める平和的な権力移譲が行われるべきだとの立場を示した。

英国のハント外相はツイッターへの投稿で「包摂的な文民指導部への迅速な移行」を呼び掛け、「軍事評議会による2年間の政権運営は答えにならない」と断じた。

バシル大統領は、1989年の無血クーデターで政治の実権を握った。しかし、1993年に米国がスーダンをテロ支援国家に指定してから孤立状態が続いている。また2003年に激化したダルフール紛争で虐殺を指示したとして、国際刑事裁判所(ICC)がバシル氏に逮捕状を出している。

北アフリカのアルジェリアでも、6週間にわたって反政府デモに直面したブーテフリカ大統領が今月初めに辞任している。

[ハルツーム 11日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中