最新記事

ブレグジット

英メイ首相、退陣表明による反対派切り崩しに失敗 EU離脱巡る混迷続く

2019年3月28日(木)11時45分

英国のメイ首相は、議会が3度目の採決で自身の欧州連合(EU)離脱協定案を可決すれば辞任する意向を表明したが、同案に強硬に反対する勢力を翻意させることはできなかった。2017年3月撮影(2019年 ロイター/Peter Nicholls)

英国のメイ首相は27日、議会が3度目の採決で自身の欧州連合(EU)離脱協定案を可決すれば辞任する意向を表明したが、同案に強硬に反対する勢力を翻意させることはできなかった。代替案を模索するために行われた投票も不発に終わり、行き詰まりは全く解消されていない。

メイ首相は与党・保守党の議員会合で、協定案が最終的に可決されれば退陣すると表明、最終手段に打って出た。

ただ、反対派の一部は態度を変えず、メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は首相の案に再び反対票を投じると明らかにした。DUPのフォスター党首はメイ氏が退陣を表明してから数時間後に「われわれは離脱協定案に賛成できない状況にある」と述べた。

離脱期日は今月29日だったが、EU首脳は前週、離脱協定案が英議会で承認されない場合は4月12日まで離脱日を延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めた。

離脱がいつ、どのように実現するのか、あるいは本当に実現するのかは現在に至るまで不透明なままで、英経済への悪影響を和らげるための合意を結ばないまま離脱するか、離脱日をさらに延期して総選挙を実施するという2つの選択肢がより現実的なものになり、他の可能性は後退した。

代替案を模索

英下院はこの日、EU離脱に関し過半数の支持が得られる代替案を模索するための「示唆的投票(indicative vote)」を実施したが、8つの案すべてで反対票が賛成票を上回った。

保守党のジェームズ・クレバリー副幹事長はツイッターへの投稿で「下院はEU残留案を否決し、全てのEU離脱案も否決し、その甚だしく優柔不断な態度を鮮明にした」と批判した。

ただ、一部の代替案はメイ首相の離脱案が2週間前の採決で集めたよりも多くの賛成票を得た。その1つはいかなる離脱案についても国民投票を実施する案で、もう1つは英国全体がEUと関税同盟を結ぶというものだ。議会は過半数の賛成票を確保する可能性が高い案を手直ししたうえで来週4月1日にさらなる投票を実施する予定。

一方、下院のバーコウ議長は27日、メイ首相の離脱協定案について、これまでに議会で否決されたものと根本的に異なるものでない限り、議会採決を提案することはできないとの見解をあらためて示した。

同離脱案は1月15日の1回目の採決では230票差で否決され、3月12日の2回目は149票差で否決された。可決に持ち込むには、メイ首相は反対派の75人以上を翻意させる必要がある。

首相府によると、メイ首相の離脱案が議会を通過した場合、同氏の後任選びは5月22日となる新たな離脱日以降に行われる見通し。

[ロンドン 27日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して

ワールド

米民間セクター代表団、グリーンランドを今週訪問 投

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中