最新記事

徹底解剖 アマゾン・エフェクト

【廃墟写真】アマゾン時代の「墓場」を歩く

THE DEATH OF RETAIL?

2019年2月27日(水)11時30分
デービッド・シム、サム・アール

オハイオ州で2008年に閉店したローリング・エーカーズ・モール PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

<米小売業界に荒波が押し寄せ、かつてにぎわったショッピングモールが続々と閉鎖。この廃墟はいずれアマゾンの倉庫に変わる>

※2019年3月5日号(2月26日発売)は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集。アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)とは、アマゾンが引き起こす市場の混乱と変革のこと。今も広がり続けるその脅威を撤退解剖する。ベゾス経営とは何か。次の「犠牲者」はどこか。この怪物企業の規制は現実的なのか。「サバイバー」企業はどんな戦略を取っているのか。最強企業を分析し、最強企業に学ぶ。

◇ ◇ ◇

アマゾン・ドットコムが、閉鎖したショッピングモールの跡地を続々と買い取り、自社の倉庫(フルフィルメントセンター)に様変わりさせている――これが今、米小売業界の最前線で起きている現象だ。「アマゾン・エフェクト」に席巻されたアメリカの変化を象徴する光景とも言える。

magSR190227pp-2.jpg

オハイオ州ノース・ランダルにあったショッピングモール、ランダル・パークはもぬけの殻に PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

中西部のオハイオ州では、アマゾンが過去2年のうちに2つのショッピングモール跡地を購入。地元紙によれば、現在は3つ目となるローリング・エーカーズ・モールの跡地に目を付けているという。

magSR190227pp-3.jpg

ランダル・パーク PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

フォトジャーナリストのセフ・ローレスは、廃墟と化したそれら3つのモールをカメラに収めた。人気のないがらんとしたフロアや破壊されたエレベーター、雪をかぶった中央ロビーなどの不気味な写真の数々は、小売店が軒並みつぶれている最近のアメリカの現状を強烈に映し出している。

magSR190227pp-4.jpg

ランダル・パーク PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

ローレスは、これら3つのモールがあったオハイオ州の、北東部の都市クリーブランドで生まれ育った。「昔はこれら3つのモールを日常的に訪れていたものだ。それから何年かがたち、廃墟と化したその場所を歩くのはシュールで複雑な体験だった」と、彼は言う。

magSR190227pp-5.jpg

アマゾンはオハイオ州アクロンで閉鎖したローリング・エーカーズ・モールの跡地も買収予定だとされる PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

もちろん、米小売業界の変化の全てがアマゾンに端を発しているわけではない。店舗家賃の高騰や不景気、アマゾン以外のネット販売の普及など消費者行動が変わったことも影響している。英ガーディアン紙によれば、2017年にはアメリカの小売店の閉店数が史上最多を記録し、モールの半数は2023年までに廃業するという。

magSR190227pp-6.jpg

ローリング・エーカーズ・モール PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

アマゾンの台頭が生んでいるのは悪影響だけではない。例えばローリング・エーカーズ・モール跡地に建設予定の倉庫は、オハイオ州がもともと予定していた再開発プロジェクトの3倍以上の雇用を生み出すとの報道もある。一方でこうしたアマゾンの施設には過重労働などを懸念する声も付きまとう。

magSR190227pp-7.jpg

ローリング・エーカーズ・モール PHOTOGRAPH BY SEPH LAWLESS

ローレスは廃墟と化したアメリカのモールばかり20カ所以上をカメラに収めた写真集の発売を控えている。しかしその写真集も、アマゾンの倉庫から配送される――そう、ローレスが皮肉を込めて語る現実が、今の米小売業界を何より雄弁に物語っている。

<2019年3月5日号掲載>

【関連記事】「アマゾン本体とAWSが表裏一体なのが最強の秘訣」田中道昭教授

※この記事は「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集より。詳しくは2019年3月5日号(2月26日発売)をご覧ください。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フジ・メディア、村上氏側に株買い増し目的など情報提

ワールド

中国、米国による船舶拿捕は「重大な国際法違反」

ビジネス

中国万科、債権者が社債の返済猶予延長を承認=関係筋

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中