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自動運転の実現で理想の都市はすぐそこに

UNPAVING PARADISE

2019年2月21日(木)18時00分
エレン・ダナムジョーンズ(ジョージア工科大学教授)

アトランタは理想への一歩を踏み出した GEORGIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY

<駐車場と古い建物を整理し自律走行車を活用すれば、全米に悪名とどろく交通渋滞も解消できる>

アトランタ中心部の交通渋滞は、アメリカの都市の中でも特に悪名高い。都市計画を専攻する私の学生たちは、16年に市から今後25年間のビジョンをつくるという依頼を受けた。徒歩での移動が容易で、人口の増加にも対応できる計画づくりなどがポイントだった。

住民が5500人ほどの地域に、9万5000台分もの駐車場があったりもした。私たちは歩行者も自律走行車(AV)も動きやすい方法を模索した。

AVバスの導入も考えた。いま世界で約40カ所でしか試験走行が行われていないものだ。AVのカーシェアリングがAVバスと共に既存の鉄道システムに統合されるとの前提に立って、駐車場となっている土地を整理する方向での検討も始めた。

歩きやすく活気ある街づくりに加え、新しい住民を呼び込む施設の設置も提案した。アート地区、都市農業地区、自転車を使いやすい都市整備などだ。

駐車場を半分だけ減らし、古いだけで歴史的価値のない低層建築物を少し減らしながら、新築ビルに駐車場の設置を義務付けなければ、2041年までに6万人分の住居スペースができると試算した。計画のスタートから2年が過ぎた今、アトランタには巨額の投資が入ってきており、一部は私たちの計画の実現に振り向けられている。

シリコンバレーの幹線道路沿いには、アトランタと同じく駐車場と老朽化した低層ビルが多い。住宅不足が深刻で、費用の高騰で新規購入は難しくなるばかりなのに、対策はほとんど進まない。著名な都市計画専門家のピーター・カルソープはこうした問題の解決を急ぐ必要性を主張し、さらに無人あるいは1人しか乗らないAVの増加による交通渋滞の悪化を避けるべきだと言う。

カルソープによれば、土地の用途指定を変えることで、より多くの人が住めるような土地の有効活用を進め、AVバス用の専用レーンを設置できる余地が生まれ、25万戸以上の住宅建設が可能になる。しかも新しい住宅の住民は、自家用車を所有する必要がない。

これらは、まだ仮定の話だ。だが未来予想図を示すことは、目指すべき地域社会をめぐる議論のたたき台になる。

自治体はAVバスに投資すべきか。バスを待ち、それに乗る時間をどう充実させるのか。無人あるいは1人しか乗っていないAVから道路の通行料を徴収すべきか――こうした議論はAVが普及する前に行う必要がある。つまり、今すぐにだ。

<本誌2019年02月19日号掲載>

※2019年2月19日号(2月13日発売)は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。

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