最新記事

フランス

「黄色いベスト」とともに仏マクロン大統領を悩ます「ベナラ事件」の影

2019年2月18日(月)09時48分

マクロン仏大統領(右)はこの4カ月間、反政府運動「黄色いベスト」の脅威を抑え込むための対応に追われている。写真左はアレクサンドル・ベナラ容疑者。パリで2018年2月代表撮影(2019年 ロイター)

マクロン仏大統領はこの4カ月間、反政府運動「黄色いベスト」の脅威を抑え込むための対応に追われている。だが、これとは別に、政権に長期にわたって暗い影を落としている問題がある。

それは「ベナラ事件」だ。ベナラとは、エリゼ宮(大統領府)の元警備責任者で、マクロン大統領のボディガードを務めていたアレクサンドル・ベナラ容疑者(27)のことだ。

昨年5月、ベナラ容疑者がメーデーのデモ参加者に暴行を加えている映像が公開され、スキャンダルに発展した。9カ月たった今でも、この事件を巡り細切れのリーク情報が報じられ、議会で証人喚問が開かれ、警察の捜査も継続するなど、仏政権の足元を脅かし続けている。

仏上院では今週、ベナラ容疑者とロシア人富豪との私的なセキュリティ契約についての喚問が行われた。ベナラ容疑者は慎重な受け答えに終始し、法相から、もし宣誓下の証人喚問で嘘をつけば、最大5年の刑に処される可能性があると警告を受けたほどだった。

マクロン大統領の不正を示すものは何も出ていないが、議会はどの段階で誰が何を把握し、なぜ早期に対応が取られなかったのかについて調査を続けており、フィリップ首相は12日、改めて透明性へのコミットメントを強調せざるを得なかった。

「司法当局が然るべき捜査を行い、もし不法行為が判明すれば、処罰が下される。当然のことだ」と、フィリップ首相は議会で語った。「首相府は、全ての疑問に完全な透明性をもって答え、司法の独立を尊重する。これは保証する」

ベナラ事件が起きる前からマクロン大統領の支持率は下がり始めていたが、大統領府が情報を隠しているとの疑惑から支持率は21%にまで急下降した。BFMテレビの調査では、73%の人がベナラ事件でマクロン氏のイメージが傷ついたと回答している。

閣僚も、同事件がマクロン大統領の5年の任期に及ぼす影響についての懸念を公言している。ある閣僚はロイターに対し、エリゼ宮はこの「ナンセンス」を収拾すべきだと指摘。ベナラ容疑者のような若くて経験の浅い人物に大統領府内で影響力を持つことを許した判断に不信感を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱自社長、ネクスペリア問題の影響「11月半ば過ぎ

ワールド

EUが排出量削減目標で合意、COP30で提示 クレ

ビジネス

三村財務官、AI主導の株高に懸念表明

ビジネス

仏サービスPMI、10月は48.0 14カ月連続の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中