最新記事

アメリカ社会

死刑囚が死刑を待ちきれず自殺

Death Row Prisoner Kills Himself After Execution Halted

2019年1月7日(月)14時50分
トム・ポーター

刑務所内で首を吊っていた死刑囚ドーシー Nevada Department of Corrections/REUTERS

<死刑囚の男は早く処刑してくれと訴えていた>

2度の死刑判決を受け、死刑執行も2度にわたって延期された男が、米ネバダ州の刑務所の独房で死亡しているのが見つかった。

その男、スコット・ドジィエ(48)は1月4日の夕方、ネバダ州にあるエリー州立刑務所で首を吊っているのが発見されたと、矯正局の報道官がAP通信に語った。

矯正局の声明によれば、発見時には周りに誰もいなかった。職員が心肺蘇生を試みたが手遅れだった。

駆け付けた救急隊によって午後4時35分に死亡が確認されたという。

ドジィエは昨年7月、薬物注射によって処刑される予定だったが刑は延期された。自社の薬品を死刑に使われては企業イメージに関わるとして、ネバダ州を提訴したからだ。

2017年11月にも、当時死刑に使用されていた薬物が死刑囚に耐えがたい苦痛を与えていることが明らかになり、「残酷で異常な刑罰」を禁じる合衆国憲法に違反するとして、ドジィエの死刑執行は延期になっていた。

本人は死刑執行を希望

ドジィエは昨年、ネバダ州ラスベガスの有力紙「ラスベガス・レビュー・ジャーナル」のインタビューで執行を延期した裁判所の判断に反論し、自分は死ぬ覚悟ができていたと言った。

「刑務所内の生活は死んでいるのも同然だ」と、ドジィエは言った。「生きているのではなく、死に後れているだけだ。誰かが俺を殺してくれたら」

死刑執行が延期された後、彼は自殺の恐れがあるとして独房で監視対象になった。

死刑廃止運動が盛り上がる中、すでに複数の製薬会社が死刑執行に必要な薬物の販売を取りやめた。薬物の調達が困難になり、いくつかの州は電気椅子など昔ながらの方法を復活させている。

ドジィエは2002年、エレミヤ・ミラー(当時22歳)を殺害した第一級殺人の罪で有罪判決を受けた。彼はミラーを銃殺後、遺体をバラバラに切断してスーツケースに詰めてラスベガス郊外に遺棄した。

その後の捜査で、2001年にアリゾナ州の砂漠で遺体となって発見されたジャセン・グリーン(当時26歳)を殺害した罪でも有罪になった。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円

ワールド

タイ次期財務相、通貨高抑制で中銀と協力 資本の動き

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の

ワールド

石油需要、アジアで伸び続く=ロシア石油大手トップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中