最新記事

韓国

炎上はボヘミアン・ラプソディからダンボまで 韓国の果てしないアンチ旭日旗現象

2019年1月5日(土)12時40分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

ボヘミアン・ラプソディと旭日旗?

現在、日本でもヒット中の映画『ボヘミアン・ラプソディ』。日本では観客動員508万人だが、韓国ではなんと日本の倍近い940万人を動員する大ヒットとなっている。これだけ韓国でブームを巻き起こしている映画だが、5月15日に20世紀FOXが公開していたティーザー映像では、ロジャー・テイラー役のベン・ハーディーが旭日旗柄に漢字で「有名」と書かれたTシャツを着ている1シーンがあった。

このシーンについて韓国ソンシン女子大学教養学部ソ・ギョンドク教授がフェイスブックに「クイーンは、まさに世界的に多くのファンをもった最高のロックグループだ。 その映画のティーザー映像に旭日旗が登場するなんて本当に大変なことだ」と指摘するなど、韓国ネチズンらは速攻で抗議。驚くことに20世紀FOX側は翌日にはワイン色のTシャツにCGが施された映像に差し替えた。

bohemianrhapsody.jpg

上がグウィリム・リーがSNSに投稿した写真、下がCGで差し替えられる前の旭日旗柄のTシャツ 共に韓国WebメディアNewestよりキャプチャ 

また、『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンのメンバー、ブライアン・メイ役を務めた俳優グウィリム・リーが映画のプロモーションのために2018年11月に東京を訪れた際、自身のSNSに掲載した写真が、背景に旭日旗のように見えるポスターが映り込んでいたことも韓国ネチズンは問題視。結局グウィリム・リーはこの写真をSNSから削除した。

このほかにも、ドラマ『ウォーキング・デッド』で人気となった韓国俳優スティーヴン・ユァンは、自身が主演する映画の監督がSNSにアップした旭日旗のTシャツを着た幼少時代の写真に「いいね」をしたことが非難され、謝罪文を韓国語と英語で掲載。2016年には少女時代のメンバー(当時)、ティファニーが光復節(8月15日、日本による植民地支配からの解放を祝う祝日)に旭日旗を連想させるロゴの入った写真をSNSにアップしたことで、謝罪と当時出演していたTV番組を降板する事態となった。

このように、繰り返し起こる旭日旗問題。韓国では旭日旗はナチスドイツのハーケンクロイツとともに"戦犯旗"と呼ばれ、戦争犯罪を象徴するものとされているが、法律で規制があるかというとそういうものはない。実際のところ、旭日旗禁止法はことあるごとに発議されてきた。2013年には当時の与党セヌリ党から発議があったが通らず。また去年の10月、済州島で行われた国際觀艦式で日本の自衛艦が旭日旗を使用するかどうかで問題となった際にも立法化の提案があったが未だ実現されていない。つまり旭日旗問題は、あくまで感情論として韓国のネットを中心に問題が炎上し、それを追うようにメディアで報道され謝罪や修正が繰り替えされているようだ。

しかし民間レベルでは規制に向けた動きが出ていて、2018年12月12日、前述のソ・ギョンドク教授が「全世界学校旭日旗退治キャンペーン」を開始すると宣言した。カナダのある学校の壁に描かれた旭日旗を在カナダ韓国人たちの働きかけによって消した"反旭日旗運動"をきっかけとして、世界各地の旭日旗デザインをなくそうというキャンペーンだ。ソ教授は、旭日旗問題を解説した冊子や映像を作り、またニューヨーク・タイムズに意見広告を出すことなどを準備中だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中