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ISIS・アルカイダの問題「むしろ悪化」 テロ首謀者殺害に喜べない理由

Dangerous Liaisons

2019年1月28日(月)11時25分
ジェフ・スタイン

オバマ政権のリサ・モナコ元大統領補佐官(テロ対策担当)は最近、中東におけるアメリカの暗い見通しを憂えた。「アルカイダが根付き、ISISが拡大して過激派を勢い付かせた条件全てが、現在も中東やその他の地域に存在している」と、モナコは言う。「この問題は消え去るどころか悪化している。イエメンを見れば、それが分かるはずだ」

トランプのイスラム教徒入国禁止令で、新たな友人づくりも難しくなっていると、モナコは言う。「イスラム圏とは関わらないという絶縁状のようなメッセージで、ISISの勢力拡大の動きに火を付けた」

パネッタのみるところ、米軍をシリアから90日以内に完全撤退させ、2020年までにアフガニスタン駐留軍も大幅縮小するというトランプの決定は、同盟国を不安にさせている。「米軍がいつ消えるか分からないからだ」

アメリカはパキスタン、ヨルダン、レバノン、ソマリアなど、軍や警察と共同作戦を公然と行えない国で、CIAや国防総省のチームに秘密裏に諜報活動を行わせてきた。だが活動は困難で危険であり、発覚すれば国家間の関係を揺るがしかねない。

プライスは「一貫して(パートナーとして)信頼できる国はあまり存在しない」と言い切る。だが「ソマリアやナイジェリア、西アフリカ、北アフリカ」では状況は好転しているとも言う。

米海軍犯罪捜査局(NCIS)に30年間勤務したロバート・マクファデンは、2007年にイエメンで拘束されたバダウィに2カ月にわたり接見した。彼はプライスほど楽観的ではないが、バダウィの殺害自体は評価している。

「空爆でテロを絶つことはできないが」と、マクファデンは言う。「ジハードに身をささげる人間には、いずれその暴力が跳ね返ってくる」

「公正な裁きは遅れても、執行されないよりはましだ」と、マクファデンは付け加えた。

<2019年1月29日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。

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