最新記事

格差

「世界中が怒りを感じている」上位26人が下位38億人分の富を保有。富裕層があと0.5%でも多く税金を払えば、貧困問題は解決するのに

Oxfam Inequality Report Highlights Wealth Disparity

2019年1月22日(火)12時59分
ジェイソン・レモン

戦う機運も 格差に怒り、富裕層の所得税率を引き上げるよう提案しているオカシオコルテス米下院議員(写真中央) Jose Alvarado Jr.-REUTERS

<国際慈善団体オックスファムが年次報告書で貧富の格差がまた拡したと指摘。各国政府に富裕層や企業への増税を呼びかける>

新たに発表された報告によると、世界で最も裕福な26人が、世界で所得が最も低い半数38億人の総資産に匹敵する富を握っており、しかも貧富の格差は拡大し続けているという。

イギリスを拠点に貧困問題に取り組んでいる国際慈善団体オックスファム・インターナショナルが、このほど年次報告書を発表。拡大する一方の貧富の格差を是正するため、富裕層への増税が必要だと各国政府に呼びかけた。2008年の世界金融危機以降、世界の超富裕層の資産総額が数十億ドル単位で増えた一方で、世界人口のうち所得が低いほうの半数にあたる38億人の資産総額は10%以上減少した。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによれば、オックスファムのウィニー・ビヤニマ事務局長は声明の中で、「世界中の人々が怒りや不満を感じている」と警告。「各国政府は、各企業や富裕層が応分の税を支払うようにすることで真の変革をもたらさなければならない」として、富裕層にほんの少し増税するだけでも、教育費や医療費を賄うための十分な資金調達が可能だと指摘した。

最富裕層にあと0.5%だけ増税すれば

報告書によれば、実際にブラジルやイギリスなど一部の西側諸国では、最も裕福な10%の方が最も貧しい10%よりも所得税率が低い。「最も裕福な1%があと0.5%だけ多くの税金を支払えば、教育を受けられずにいるすべての子供2億6200万人に教育を授け、330万人に医療を提供して命を救ってもまだ余るだけの財源を確保できる」という。報告書はまた、世界の超富裕層が約7.6兆ドルの租税回避をしているせいで、途上国は年間約1700億ドルの所得を失っている、ともいう。

前向きな報告もあった。過去数十年で極度の貧困状態にある人の数が大幅に減少したのだ。

英ガーディアン紙は、「極度の貧困状態にある人の数が大幅に減少したことは、過去25年における最大の成果のひとつだ。しかし貧富の格差が拡大していることで、さらなる貧困解消の可能性が脅かされている」というオックスファムのマシュー・スペンサー活動・政策担当ディレクターの言葉を報じている。「私たちの経済の仕組みは、一部の特権層に富が集中するようになっており、その一方で何百万もの人々が生存ぎりぎりの生活を強いられている。女性たちは一人きりで子供を産んで命を落としており、子供たちは貧困から脱出する手段となる教育を受けられずにいる」と彼は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは146円後半へ上昇、トランプ関税で

ビジネス

アングル:超長期金利再び不安定化、海外勢が参院選注

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中