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ドイツで極右・反極右抗争に巻き込まれたコカ・コーラの神対応とは? 

2018年12月7日(金)15時30分
モーゲンスタン陽子

コカ・コーラのロゴを勝手に使って、「1年を振り返るこの時期:AfDに対してNein(No)と言おう!」と書かれた看板 Matthias Borowski-twitter

<ベルリンにコカ・コーラのロゴを勝手に使って「AfDに対してNoと言おう!」と書かれた看板が現れた。極右政党AfDの早まった反発に巻き込まれたコカ・コーラの対応にネット上で賛辞が送られている>

12月に入り、一気にクリスマス色の深まった今月4日、ベルリンの中心地にとある看板が現れた。「1年を振り返るこの時期:AfDに対してNein(No)と言おう!」というスローガンの書かれた真っ赤なボードには、コカ・コーラのロゴとサンタクロース。

極右政党のAfDはすぐさまこれに反発し、ツイッターなどでコカ・コーラを非難、商品のボイコットを呼びかけた。しかし、同社はこの件に無関係であることが判明。看板の仕掛け人である、とあるキャンペーンの存在が明るみに出るが、同時にコカ・コーラ社のスマートな対応が賞賛を集めている。

「すべてのFake(フェイク)が falsch(間違い)である必要は無い」

反イスラム、反移民、反EUなどを唱える政党AfD「ドイツのための選択肢」は昨年9月の連邦議会選で国政議会に初議席を獲得、以来第一野党となっている。ベルリンの党本拠地近くに登場した看板について、Afdザクセンの副長マキシミリアン・クラーは「これはドイツ最大野党であり、政治的にもドナルド・トランプと近しいAfDに対する政治声明だ。政治声明はコカ・コーラ社の新しいポリシーなのか?」とツイート。無関係のトランプを引き合いに出すあたりが米企業に対する脅迫めいて聞こえる。


一方、独コカ・コーラ社は公式に関与を否定。つまり、この看板はFake「フェイク」というわけだ。しかしながら、同社のコミュニケーション・ディレクターを務めるパトリック・クランマーが個人アカウントで「すべてのFake(フェイク)が falsch(間違い)である必要は無い」とツイートすると、独コカ・コーラ社も公式アカウントでこれをリツイート。


社名を勝手に騙られ、本来なら法的行為をとってもおかしくないところなのに、このように簡潔で、韻も踏む見事なツイートで立場を表明したクランマーと、それを支持した同社に対し、賞賛の声が集まっている。また、看板を本当にコカ・コーラのものだと思ってしまった市民からの、応援のツイートも多い。

これに対し6日には、ペプシを利用したAfD支持の看板が登場。AfDベルリンがクランマーの名言をそのまま借用して看板の写真をツイートした。ペプシはこれを不快に思い、同党に対して法的措置も検討しているという。

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