米中対立はむしろ「熱戦」
●ブラックストーン・グループ(The Blackstone Group)(委員:シュテファン・シュワルツマン共同創立者&CEO)
ブラックストーン・グループは、アメリカの大手の投資ファンド運用会社で、最も大きな上場株投資会社の一つである。本社はニューヨークにあり、キッシンジャー・アソシエイツはブラックストーンの本社ビルの中にある。仲の良さが窺われよう。1985年に設立。世界各地に支社を持つ。シュワルツマンは習近平政権になってから清華大学に中国の若者を対象とした人材養成のための「蘇世民書院」を設立(蘇世民はシュワルツマンの中国名)。習近平とは非常に緊密で、中国のために貢献したいという熱烈な親中派だ。ブラックストーンが保有する資産には、軍事・衛星技術関連の会社が含まれると指摘されており、この技術が中国政府に渡らないようにアメリカ政府は懸念しているようだが、習近平とシュワルツマンの緊密さは増すばかりである。シュワルツマンは、トランプの古くからの友人だったこともあり、キッシンジャーの推薦によりトランプ政権誕生当初はトランプのブレインである大統領戦略政策フォーラムの議長を務めていたが、このフォーラムはメンバー(16人)の内の何人かがトランプの政策に反対したため、その後、解散した。トランプのブレインだった人物が習近平の傍にいて習近平を熱烈に応援しているのである。この現実を見て見ぬふりをしながら、米中関係の分析をすることは不可能だ。
複雑に食い込んでいる米中の投資
彼らはみな米企業の対中投資をする際にアドバイスを与えながら、中国でのビジネス展開を支援し、中国企業の対米投資をも支援する。
中国にいる在米企業が、もし中国政府によって締め出されたら、アメリカ経済は崩壊に近いほど減衰する危険性を孕んでいる。だからトランプ政権は中国に対して思い切り強硬に出たくても出られない。
筆者は1990年代初期から在米の華人華僑を取材し続けてきたが、彼らは意図的にその複雑さを深めることにより、米中が戦争できないようにしているのだと言っている。
あらゆる面から米中両国は複雑に絡まっているのであり、ただ単に米中二大国が対立し、その対立がしばらくは続くということを以て、「新冷戦」などという言葉で、現在の米中関係を位置づけることは、現状の把握を誤らせる。
金融あるいは投資は、グローバルな世界で動いている。金融工学という学問にしても、実は米ソ冷戦構造の消滅によってニーズが少なくなったロケット工学などに使われる物理学の流体力学が応用されたことにより補強されたという側面を持つ。流動的なダイナミズムを持っているのだ。