最新記事

米中対立は「新冷戦」ではない

2018年11月22日(木)08時57分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

その洞察力は尊敬に値するし、特に10月4日のハドソン研究所におけるペンス副大統領のスピーチは実に立派だ。徹底的な中国批判は的を射ており、説得力がある。

しかし、もしこれがアメリカ政府としての一貫した姿勢であり、それが「新冷戦」構造であるなら、なぜアメリカの同盟国である日本が、その中国に「協力を強化する」と申し出たのか。同行した数百社の日本企業と中国との提携は、アメリカに脅威を与えているハイテク分野(特に半導体分野)でも中国を支援して、結果的に日中で手を携えてアメリカに対抗することになるではないか。ましてや「一帯一路」において「協力を強化する」と安倍首相は習近平の目の前で誓ったのだから、これは完全に「打倒トランプ路線」を行くことになってしまう。

わが日本国の首相は、米中間に「新冷戦」構造が生まれたというのに、中国と手を結んでアメリカに対抗するということなどできるだろうか?そのような性格を帯びた選択をしたりなどするだろうか?

もし中国がアメリカと「新冷戦」関係にあるのならば、日本はアメリカに徹底的に協力して同盟国と歩調を合わせなければならないはずだろう。

しかし、そうはしていない。

シンゾー(安倍首相)が「100%、共にいる」と誓ったドナルドとの友情を捨てて、このような背信行為を断行したとでも言うのだろうか?いくらなんでも、そこまではしていないだろうと、推測する。

だとすれば、このことから見ても、「新冷戦」構造などは存在しないことになろう。

あるのは、独裁資本主義(=国家資本主義)国家が有利なのか、民主主義的国家における資本主義が有利なのかというせめぎ合いであり、グローバリズムがいいのか、それとも一国主義がいいのかというトランプ流価値観の闘いであり、人類が下す審判だ。これはアメリカ国内での闘いでもあり、そしてヨーロッパにも波及するか否かの瀬戸際でもある。

何れの場合においても、人権と言論の自由と平等が確保されなければならないが、独裁国家においては、そのどれもが保障されていないことは明らかだ。

だというのに、民主主義国家において、それが十分に保障されているのか否か、その辺が怪しくなっていることが問題なのではないだろうか。ここに民主主義の危うさが潜んでおり、日本はそこに目を向けるべきだろう。

米中という、二つの大国のハイテク競争を、「新冷戦」と片付ける安易さにこそ、本当の危機が潜んでいるのではないかと思えてならないのである。

p.s.:今年10月末になって、顧問委員会の新しい(2019年版の)メンバーが発布されたが、さすがにそのリストからはクァルコムの名前が消えていたことを、このコラム公開後に発見した。クァルコムのCEOは長年にわたって顧問委員会メンバーだったが、来年からはいなくなることになる。トランプ大統領の命令か、クァルコム自身の決断かは分からない。他の新メンバーが2,3人増えているが、資産運用会社など、やはり米大財閥の一群であることに変わりはない。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国発展フォーラム閉幕、指導部が安定性アピール

ビジネス

銅需要、電化・AI分野で堅調続く見通し=フリーポー

ワールド

米、イラン攻撃継続へ 一時停止はエネルギー施設のみ

ワールド

豪・EUが貿易協定締結、重要鉱物の中国依存度低減へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 6
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 9
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中