最新記事

米利回り

債務膨張と利回りの上昇で、究極の選択を迫られる米予算

US Will Soon Spend More On Interest Than Medicaid 

2018年11月12日(月)15時30分
ベンジャミン・フィアナウ

ワシントンの米財務省ビル  Brian Snyder-REUTERS

<歳出拡大と大型減税を自画自賛するトランプ政権だが、債務超過で将来へのツケは嵩む一方だ>

米連邦政府の債務がこのまま膨張し続ければ、利払いを賄うために米議会は医療か教育への歳出を減らさざるを得なくなると、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。

2017会計年度における連邦債務の利払いは2630億ドルで、米政府予算の6.6%、GDP(国内総生産)の1.4%に達している。米議会予算局(CBO)は、利払いは2028年までに9150億ドル、対GDP比で約3.1%に跳ね上がると予想する。

しかし歳出は増える一方。米議会は今後2年で歳出上限を3000億ドル増やす、という予算関連法を2月に成立させたし、トランプ政権も昨年、大型減税の実施に踏み切った。米議会はじきに、メディケイド(低所得者向けの医療保険制度)や国防費やその他支出を削って、国債の利払いに回すしかなくなる。

トランプの1.5兆ドルの大型減税と議会が決めた3000億ドルの歳出上限上積みが、財政赤字の膨張に拍車をかけていると、アナリストは言う。だが今回はそれと同時に、米国債の利回り上昇が追い打ちをかけている。

このままいけば、米政府の利払いは2020年までにメディケイドの予算、2023年までに国防費を抜き、2025年までには国防費を除くすべての任意の政府事業を合わせた予算総額を超えてしまう。

ほかの連邦予算にシワ寄せ

しかも今後5年で米国債残高の約70%は満期を迎え、米政府はより高い金利で借り換える必要に迫られる。

「米連邦予算の利払いが最も急速に膨らんで、子供関係の歳出などほかの重要な予算を圧迫しようとしている。どんな支出にも躊躇することになるだろう」と、超党派の米非営利組織「責任ある連邦予算委員会」(CRFB)のマヤ・マクギニアス会長はウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

アメリカの政府債務は対GDP比で急増しており、今後10年でさらに増えると予測されている。2018年末でGDP比78%という比率でさえ第2次大戦以降で最も高い水準だが、CBOによれば、それが2028年までに96.2%へと膨れ上がる見通しだ。

米財務省は10月、2018年の政府の借入が前年度の2倍強の1兆3400億ドルに達する見通しだと発表した。2010年以来の高水準だ。

同省によれば、その原因を、2018会計年度は国債の利払い負担が前年比620億ドル(20%)増加したため、としている。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱重の4━9月期営業益86.7%増、防衛・宇宙な

ビジネス

ボーイングのスト終結、賃上げ案を承認 6日にも生産

ビジネス

モルガンS、中国で先物事業の認可取得 米大手で2社

ビジネス

任天堂、通期営業益予想3600億円に下方修正 スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 2
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王子の映像が話題に...「不幸なプリンセス」メーガン妃との最後の公務
  • 3
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄道計画が迷走中
  • 4
    「生野菜よりも、冷凍野菜のほうが健康的」...ブロッ…
  • 5
    ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無…
  • 6
    在日中国人「WeChatで生活、仕事、脱税」の実態...日…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    「これぞプロ」 テイラー・スウィフト、歌唱中のハプ…
  • 9
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 10
    NASA観測が捉えた「アトラス彗星の最期...」肉眼観測…
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 5
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 6
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…
  • 7
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 8
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    「第3次大戦は既に始まっている...我々の予測は口に…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 7
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中