最新記事

米中関係

中国はアメリカ中間選挙の結果をどう見ているか──「環球時報」社説

2018年11月10日(土)20時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

これらはいずれも、2015年5月に習近平政権が打ち出した「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」を完遂させようということを指しており、環球網の社説の最後にある「中国は自分のやるべきことをきちんとやるのみで、これ以上に堅固で、ビクともしないものはない」に呼応したものだとみなすことができよう。習近平国家主席が最近言い始めた「ハイテク製品における自力更生」を指している。

また「環球網友」ではないが、同じく環球時報社説のコメントの一つ(ハンドルネーム費尽周折)に「民主党に大統領候補として、これぞと思しき大物を立てるように全力を尽くし、全世界が連絡し合って反トランプの機運を盛り上げ、一致団結してトランプ打倒を目指していこう」というのがあり、削除されていない。ということは、「トランプ再選妨害」を目指そうとしている動きを環球網は抑え込もうとはしていないことになり、トランプが言ったところの「中間選挙における中国による妨害」が、必ずしも全くの虚偽ではないことを暗示するものとして興味深い。

一方、中央テレビ局CCTVは、中間選挙の結果に関してはほとんど報道せず、ただひたすら、結果が出た翌日の記者会見で、ロシアゲートに関して質問したCNNの記者をトランプが罵倒する場面(冒頭の写真に関する場面)だけを流し続けた。

なお、環球網社説の外交関係のは、習近平の今後の動向を示唆するものとして注目される。事実、中間選挙が終わるのと時を同じくして、習近平はキッシンジャーと会っている。その背後にあるものに関しては、別途論じるつもりだ。

(来月出版する本のゲラ校閲に忙殺されていたため、しばらくの間コラムを休みました。申し訳ありませんでした。)

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独製造業PMI、4月改定48.4 22年8月以来の

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで29人負傷、ロシア軍が

ビジネス

シェル、第1四半期は28%減益 予想は上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中