最新記事

記者殺害事件 サウジ、血の代償

「政権打倒は叫ばない」ジャマル・カショギ独占インタビュー

IN HIS OWN WORDS

2018年11月1日(木)18時45分
ルーラ・ジュブリアル(ジャーナリスト)

著名なジャーナリストが自分の意見を語ったという「罪」で残忍な処刑を受けた後も、アメリカではサウジ政府の責任論を回避しようとする動きが根強い。しかし、国際会議をキャンセルしたり、武器輸出の契約をいくつか停止するだけでは不十分だ。

米財務省はサウジアラビアに広範な制裁を科すべきだ。ムハンマドを政権から去らせるべきだ。ムハンマドだけでなく、彼が最たる象徴である君主制の暴政そのものを終わりにするべきだ。

国際社会がムハンマドに圧力をかけて、無慈悲な指導者からサウジ国民を守ることができるだろうか。そう尋ねるとジャマルは言った。

それが唯一の希望だ、と。

全ての人に今、彼が語る希望に耳を傾けてほしい。

◇ ◇ ◇

――ムハンマドが主張する改革とは何か。彼はイスラム教そのものを改革しようとしているのだろうか。

目新しいことを言っているわけではない。映画館を建てるか、あるいは霊廟の礼拝を解禁したいとムハンマドが言えば、イスラム法学者はまず前者を選ぶ。後者は(サウジアラビアが国教とする復古主義の)ワッハーブ派にとってあり得ないことだ。

ムハンマドの改革はワッハーブ派の改革であって、イスラムの改革ではない。その区別は重要だ。

――本当にワッハーブ派を改革しようとしているのか、見掛けだけの改革にすぎないのだろうか。

彼は本気だ。宗教警察の権限の縮小はまさに改革で、筋金入りのワッハーブ派には受け入れ難い。映画館やエンターテインメント、音楽、女性のベールなど、ムハンマドは社会で生きる人々に直結する問題に取り組んでいる。

司法制度は重要な改革であり、社会と貿易もその恩恵を受けるだろう。イスラム思想の多様性と司法は、どちらも重要な改革だ。この2つを実行できるなら、私は彼を改革者と認めよう。

――もし彼が司法改革を行い、イスラムの多様性を認めたら......。

イスラムは多様な宗教だ。そこは重要だ。ワッハーブ派の核心を成す原則は多様性を認めないこと。ワッハーブ派は真理の所有者、唯一の所有者を自任している。そのために他のあらゆる宗派と対立することになる。

――サウジアラビアでは女性はさまざまな法律で男性の保護下に置かれているが、これらの法律を撤廃する真の司法改革が必要ではないか。これらの法律はイスラム法に基づくものではない。イスラム法では自分の意思で結婚するなど女性の権利が認められている。

女性の問題はもちろん重要だが、司法改革をそれだけに矮小化してはいけない。建国の父アブドル・アジズの時代からサウド家は成文法の制定を拒んできた。成文法は世俗的だと。私の言う改革は成文法の制定だ。手続きを踏んだ裁判が行われ、(成文法に基づいて)裁判官が判決を下すようにする......それこそが必要な改革だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中