最新記事

自動車

深まる日産とルノーの溝 かじ取り役不在で3社連合の前途多難

2018年11月23日(金)18時04分

1月23日、日産自動車、ルノー、三菱自動車3社の会長を兼務してきたカルロス・ゴーン容疑者(写真)が22日の日産の臨時取締役会で、同社の会長職と取締役の代表権を解かれた。ルノーは解任決議の延期を求めていたとされ、早くも日産とルノーの間に溝が生じている。米カリフォルニア州で2016年1月撮影(2018年 ロイター/Noah Berger)

日産自動車、ルノー、三菱自動車3社の会長を兼務してきたカルロス・ゴーン容疑者が22日の日産の臨時取締役会で、同社の会長職と取締役の代表権を解かれた。ルノーは解任決議の延期を求めていたとされ、早くも日産とルノーの間に溝が生じている。

かじ取り役を失った3社の連合(アライアンス)のあり方がどのように変化するのか。その前途には不透明な霧が立ち込めている。

ルノーの解任決議の延期要請を無視

金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕されたゴーン容疑者の会長と取締役の代表権はく奪が提案された臨時取締役会は、横浜市の日産本社で22日午後4時半から始まった。この日の議論は、午後8時半まで約4時間に及んだ。

関係者によると、臨時取締役会前にルノーは、日産に解任決議の延期を強く求めていた。しかし、日産は全会一致による解任に持ち込んだ。4時間のうち、「相当な時間を割き、(ゴーン容疑者逮捕に至った)内部調査の結果が丁寧に説明された」(別の関係者)といい、ルノー出身の2人も賛成せざるを得なかったもようだ。

後任の会長は今回決めず、暫定的な会長も置かなかった。選出の透明性や独立性を保つため、社外取締役3人からなる委員会(委員長:豊田正和氏)が新たに設けられ、現取締役の中から候補を提案することにした。

投資資金や経費の私的流用も発覚し、会社を私物化していた実態が明らかになったゴーン容疑者。日産幹部の1人は「日産のステークホルダー全員に対する裏切り行為。絶対に許されない。解任は妥当」と話す。ただ、これまでの3社連合は、ゴーン容疑者の「鶴の一声」で意思決定されてきただけに、今後は意見がまとまらず、「時間がかかるのでは」と懸念する。

三菱自関係者は「ゴーン氏は経営者としては非常に優れているし、日産と三菱自が対立した時も、三菱自の意見を尊重してくれた」と、その存在感の大きさに言及している。

日産とルノー、深まる溝

日産の親会社であるルノーは、20日の臨時取締役会で、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を暫定トップとし、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)の解任は見送った。「解任するのに十分な情報や証拠がない」。ルノーの筆頭株主で15%を出資するフランス政府のこうした意向をくみ、疑惑の詳細が判明するまで先送りした。

フランス政府はもともと、ルノーの日産に対する影響力を強めたい意向があり、近年はゴーン会長の退任後を見据え、連合が解体しないよう不可逆的な関係構築を目指していた。一方、日産は対等な関係や経営の独立性維持を求め続けており、真っ向から異なる。

ゴーン容疑者の処遇も、ルノーは「見送り」。一方、同社が決議延期を求めたにもかかわらず、日産はこれを受け入れず「解任」。日産とルノー、フランス政府の溝はさらに深まる恐れがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開義務付け法案を可決

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中